グローバルな地域分散体制が奏功し売上・利益ともに過去最高を更新
2024年度の業績は、売上収益が7,766億円で前期比プラス6%、既存事業コア営業利益が835億円で前期比プラス4%と、いずれも過去最高を更新しました。2030年度に向けてMid-single Digitでの利益成長を目指していく過程で、2024年度は、資材費・人件費等のコストの増加や減価償却費の負担増もあり、短期的には利益成長が鈍化する環境にありました。加えて、近年の成長を牽引してきた米国市場での業績が停滞するなかにあっても、全セグメントで前期比プラスの売上収益を達成できたことに、当社の強固なビジネスモデルに対する確かな手応えを感じています。
単位:億円 | 2024年度 決算開示ベース | ||
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実績 | 2023年度比 | ||
増減額 | 増減率 | ||
売上収益 | 7,766 | + 437 | + 6.0% |
既存事業コア営業利益※ | 835 | + 29 | + 3.6% |
営業利益 | 744 | + 10 | + 1.4% |
親会社の所有者に帰属する当期利益 | 550 | + 8 | + 1.6% |
既存事業コア営業利益率 | 10.8% | △ 0.2pt | − |
営業利益率 | 9.6% | △ 0.4pt | − |
親会社の所有者に帰属する当期利益率 | 7.1% | △ 0.3pt | − |
地域別に見ると、まず国内事業については、原材料費や物流費などのコスト上昇圧力にさらされるなか、効果的なマーケティング活動により全セグメントで増収増益を達成しました。約5割のシェアを持つ即席めん事業が好調を堅持するとともに、非即席めん事業では湖池屋と日清ヨークが成長を牽引しています。例えば、日清ヨークは乳酸菌飲料市場でシェア第2位にあり、過去10年でシェアを10%以上拡大させてきました。非即席めん事業各社も、当社グループのシナジーを活かした商品開発やマーケティング等により、今後もシェア拡大による成長が期待できます。
海外事業については、全地域で増収を達成しました。特にブラジルや中国が成長を牽引しています。利益面では、前述した米国市場の停滞や欧州の一部の持分法適用会社の減益があったものの、全体としての着地は微減に留まり、エリアごとの業績の波を補完し合えるバランスの取れたビジネスポートフォリオ・地域分散体制の構築が着実に進展していることが確認できました。
グローバル規模で不透明感が増す2025年度は、当社グループに限らず、世界中の企業にとって難しい時期だと認識しています。特に懸念されるのが米国の関税措置や円高傾向が及ぼす影響ですが、当社グループの海外事業は「地産地消」型のビジネスモデルを基本としており、米国事業における完成品の輸入は僅少であるため、関税による影響は限定的です。為替の影響については、為替一定ベースの試算と比較して、既存事業コア営業利益で約20億円のマイナス影響を見込んでいますが、円高の逆風があるなかでも、前期を上回る計画です。
単位:億円 | 2025年度 通期 | 2025年度 通期 (為替一定ベース) | ||
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連結業績予想 | 2024年度比 | |||
連結業績予想 | 2024年度比 | |||
売上収益 | 8,100 | + 4.3% | 8,300 | + 6.9% |
既存事業コア営業利益※ | 836 | + 0.1% | 855 | + 2.3% |
営業利益 | 756〜796 | + 1.7%〜+ 7.0% | − | − |
親会社の所有者に帰属する当期利益 | 530〜560 | △ 3.7%〜+ 1.8% | − | − |
EPS | 180〜191円/株 | − | − | − |
米国市場における停滞の原因を分析し、現地の体制を強化することで、再び成長軌道へ
当社グループは近年、米国市場での業績拡大を軸に急成長を実現してきましたが、2024年度は、これまでの反動もあって成長に鈍化が見られました。要因としては、エリア拡大に伴う倉庫費用の増加など内部要因に加え、韓国系商品なども含めた競争環境の激化などがありました。一方で、即席めんという商品全体の認知度向上に加え、日本への旅行などを通じて本格的な麺食文化に対する理解が進むにつれて、高価格・高付加価値商品へのニーズが高まっていることはビジネスチャンスと捉えています。
こうした米国市場におけるポテンシャルの高まりを捉え、さらなる利益成長を図るため、2025年度に米州全体を統括していく現地拠点としてRegional Headquarters of Americas(以下:RHQ-Americas)を設置します。これまでは「地産地消」の方針のもと、「米国のことは米国主導で」というスタンスでしたが、即席めんの浸透度が低い米国内には、やはり即席めんに関する知見・ノウハウを備えた人材は多くありません。そこで、RHQ-Americasに、グループ全社でグローバルベースで培ってきたリソースを投入し、時差のない拠点に本部機能を置くことで、特にマーケティングや製品開発などの分野において、事業会社と一体になったスピーディな意思決定と経営を実現していきます。
グローバルな成長ポテンシャルを発揮できるよう体制面の課題克服とともに積極的な投資を継続
当社グループが中長期的な成長を実現していくには、米国に限らず、広く海外市場全体で事業規模を拡大していく必要があります。
地域ごとの即席めんの1人当たり年間喫食数を比較すると、日本が約50食に対し、米国では約15食、欧州では1桁台の地域が多く、人口の規模や伸び率を考えれば、普及率を高めることで大きな成長が見込まれます。一方、既に即席めんが広く普及しているアジアでは喫食数が日本以上の地域もありますが、低価格帯商品が中心であり、今後の経済成長に伴う所得水準の向上にあわせて高価格帯商品を提供することで、当社のシェアアップ・売上拡大が期待できます。このように、地域ごとの即席めんの普及度合いや経済発展の度合いに応じた商品を開発・提供できるところに当社の成長ポテンシャルがあります。すでに利益の約5割を海外事業から得ている状況ですが、こうした強みを活かし、その比率をさらに高めていく考えです。

一方で、近年の急速な海外展開に対し、人材やガバナンス面で取り組みを加速させる必要があります。当社が海外市場でポテンシャルを発揮し、真のグローバルカンパニーとして成長を続けるためには、さまざまな観点から、内外の環境変化に適合した体制整備が重要であり、その準備を進めています。
あわせて、拡大する需要に応えるための、さらなる設備投資も不可欠です。2025年から2026年度にかけて米州3カ国に新工場を新設、欧州でも新工場新設を見据えて用地を取得します。各地域における即席めん市場の成長をしっかりと捉えていく考えです。加えて、国内でも生産体制強化のための投資を予定しており、将来への布石としての商品開発や新事業への投資も重要です。全体では、2024年度に781億円の投資を実施しており、2025年度にはさらに1,000億円規模の投資を計画しています。従来の300億円台の水準と比較して大幅な増加となりますが、2025年度をピークとした後は、巡行水準への移行を見込んでいます。
こうした成長投資に伴う減価償却負担や、資材価格・物流費・人件費など不可避のコスト増もあり、短期的には利益成長が鈍化する環境にありますが、そのような環境下でもトップラインとキャッシュフローは着実に成長させ、2030年に向けて期間平均でMid-single digitの利益成長に道筋をつけていきます。

成長投資と株主還元のバランスを考慮した戦略的なキャピタルアロケーション
当社グループでは、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けて、「中長期成長戦略 2030」において資本収益性の KPIとしてROEを採用しました。2030年度までを目途に15%まで向上させる目標を設定しており、その達成に向けて、戦略的なキャピタルアロケーションによる企業価値の最大化を図っています。
特に近年は海外事業の売上拡大を背景に、キャッシュの創出力の強化が進んでおり、EBITDAも安定的に1,000億円を超える水準にあります。これは、2018年度のほぼ倍の水準です。フリー・キャッシュフローについては、2024年度は、前年度末が休日であった特殊要因もあり営業キャッシュフローが前年度比で減少したことから、マイナスになりました。2025年度は、営業キャッシュフローは通常水準に戻るものの、設備投資がピークを迎えるため同様の傾向が続きますが、大型設備投資が一巡し設備投資の巡航化を見込む2026年以降はフリー・キャッシュフローもプラスに転換し拡大していく計画です。
また、2024年度には資金調達手段の多様化に向け、外部格付「AA」格を取得し、総額500億円の普通社債での資金調達を実施しました。今後も、レバレッジを有効に活用して収益基盤の底上げを図るとともに、株主還元の拡充にも注力していきます。
株主還元については、配当性向40%を目安に累進配当を行うとともに、キャッシュのバランスを見ながら機動的な自己株式取得を検討します。2024年度は、総額400億円の自己株式取得を実施したことで総還元性向が初めて100%を超えました。 2025年度も総額200億円の自己株式取得を計画しています。
キャピタルアロケーションの推移

格付情報
格付機関名 | 格付 |
---|---|
日本格付研究所(JCR) | AA |
格付投資情報センター(R&I) | AA- |
株主・投資家とのコミュニケーションを強化し、中長期的な成長シナリオへの理解と共感を獲得していく
当社グループの中長期的な成長シナリオを株主・投資家の皆様にご理解いただけるよう、海外も含めたIR活動を一層強化しています。海外の店頭でも即席めんのプレゼンスが高まっていることもあり、海外投資家の中には、即席めん事業の商品特性や成長ポテンシャルに興味を示していただく方も多く、確かな手応えを感じています。
2024年度は400件超の面談を実施し、その8割以上が海外投資家でした。証券会社主催のカンファレンスなどにも積極的に参加するとともに、当社主催の社外取締役とのミーティングなど特徴的なIRイベントや国内外拠点見学会なども実施しています。これらの積極的な取り組みが評価され、日本証券アナリスト協会が毎年発表している「証券アナリストによるディスクロージャー優良企業選定」の食品部門ランキングにおいて、従来10位台であった順位は、この3年で4位にまで上昇しました。
今後も当社グループの成長ポテンシャルをわかりやすく可視化し、お伝えするとともに、株主・投資家の皆様からのご期待にお応えできるよう、確かな利益成長を実現していきます。
VALUE REPORT
2025
WHO日清食品グループとは?[4.73MB]
- グループ理念
- 社会価値創造History
- 日清食品グループの今
- 価値創造プロセス
- 日清食品グループの6つの資本
- 日清食品グループのコアとなる強み
HOWどのように目指すのか?[19.7MB]
- CSOメッセージ
- CFOメッセージ
- CIOメッセージ
- 中長期成長戦略 2030
- 成長戦略❶ 既存事業のキャッシュ創出力強化
- 国内即席めん事業
- 国内非即席めん事業
- 国内TOPICS
- 海外事業
- 米州地域―米国
- 米州地域―ブラジル/中国地域
- アジア地域/EMEA地域
- 成長戦略➋ EARTH FOOD CHALLENGE 2030
- 気候変動問題へのチャレンジ
- 資源の有効活用へのチャレンジ
- 成長戦略❸ 新規事業の推進
- 最適化栄養テクノロジーの多面展開
- 完全メシを日本から世界へ
- 最適化栄養食の基礎研究
- 人的資本の拡充
- 健康経営・人権への取り組み
- 社外取締役パネルディスカッション
- コーポレート・ガバナンス
- 取締役・監査役
データ [1.11MB]
- 財務サマリー
- 非財務サマリー/主な外部評価
- 即席めんの世界市場データ
- 会社情報・株式情報