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日清食品ホールディングス株式会社代表取締役副社長・COO 日清食品株式会社 代表取締役社長 安藤 徳隆

COOメッセージ

インスタントフードだからこそできる“食と健康のリフレーミング”に挑み続ける

日清食品ホールディングス株式会社代表取締役副社長・COO 日清食品株式会社 代表取締役社長 安藤 徳隆

日清食品ホールディングス株式会社
代表取締役副社長・COO
日清食品株式会社 代表取締役社長

安藤 徳隆

Beyond Instant Foods
~食と健康のリフレーミングでHuman Well-beingに貢献する~

2015年、私が日清食品の社長に就任した際、既存事業の深化を目指す「100年ブランドカンパニーへの挑戦」とともに打ち出した経営スローガンが、新規事業の探索を意味する「Beyond Instant Foods」でした。人口減少により国内の即席めん市場が将来にわたり拡大し続けると見込むことは難しく、日清食品の持続的な成長には新たな事業の創出は必須と言えます。 「Beyond Instant Foods」には、既存事業を超える、新しい食文化を自分たちの手で作っていくという意志が込められています。

日本ではかつての食糧難や栄養不足の時代から飽食の時代へと変わり、食べることに困ることはほぼなくなりました。しかしその一方で、オーバーカロリーや隠れ栄養失調など新たな食と健康の課題が発生しています。海外に目を向けてもオーバーカロリーはもちろん、いわゆるフードデザートの存在など多くの課題が存在しています。それらの解決には新しいアプローチが必要だと考えています。

私たちが目指すのは、新規事業を通じて新しい食文化を創り出し、食の価値観を根本からリフレーミングすることです。リフレーミングとは、既存の枠組みを外し違う視点から見ることであり、モノゴトの捉え方を意図的に変えることで新しい価値を提供する考え方です。スティーブ・ジョブズが1997年にApple社に復帰した時、パソコンを「効率を上げるためのビジネスパーソンの道具」から「創造性を高めるためのクリエイターの相棒」へと再定義したことは、リフレーミングの好例と言えるでしょう。彼は、パソコンのターゲットや顧客体験をズラすことでパソコンに新たな価値を与えることに成功したのです。そうして発売された初代iMacは大ヒットとなり、現在に続くApple社の隆盛の基礎を築きました。

私たちが目指す「食と健康」のリフレーミングも、同様に社会の常識や今までの「当たり前」を打ち破り、新たな価値を創造する挑戦と言えます。現在、インスタントフードには「健康に悪そう」という見方、言ってしまえば「偏見」が根強く存在しています。これまでさまざまな取り組みを重ねてきましたが、まだ完全には払拭できていません。そこで私たちは、このネガティブなイメージを一気に覆し、「インスタントフードこそが最も健康的な食事である」という新たな世界観を創り上げようとしています。「この世で一番健康的な食事はカップヌードルに決まっている」という世界に変えていきたいのです。

また、これまで健康維持のためには食欲を抑制、自制することが必要とされてきました。食欲のままに生きることはタブー視され、健康と過度な食欲は相反するものと考えられてきました。しかし私たちは、「食欲のままに生きる=どんどん健康になる」という新しい世界を実現していこうとしています。食欲に寄り添い、行動変容を強いることなく健康を実現するソリューションを生み出すことで、「食と健康」の関係を新しいものへとリフレーミングすることを目指しています。

食欲を肯定する「食」とは?

日清食品ホールディングス株式会社代表取締役副社長・COO 日清食品株式会社 代表取締役社長 安藤 徳隆

「完全メシ」を生み出してきた新規事業は、現代の食の課題に向き合い、健康食の概念を一新し、Human Well-beingに貢献する取り組みです。そこで開発されている「完全メシ」は、日本人の食事摂取基準に基づく33種類の栄養素とおいしさの完全なバランスを追求したブランドです。つまり、味も普段の食事と変わらない、おいしさと栄養の“完全な”バランスを追求しています。

新規事業は4年目を迎え、「完全メシ」シリーズは幅広い食のカテゴリーで展開し、メシ(米飯)、麺、パンの3大主食系も完全メシ化することができました。「完全メシ」を手にすることができるタッチポイントを増やすことで、2025年度には100億円ブランドの実現を見込んでいます。

例えば、パッケージフードでは、2024年には「完全メシ カップヌードル汁なしシーフードヌードル」を発売しました。これは待望のカップヌードルブランドの完全メシ化であり、当社が持つ強みの一つ、ブランド力を活かした商品展開と言えます。また、老舗パン屋の木村屋様とコラボレーションした「完全メシ あんぱん」やグループ会社である湖池屋のスナック菓子を完全メシ化した「完全メシ カラムーチョ」など、そのラインナップを大幅に増やしています。さらにはEC専用になりますが冷凍食品の「冷凍 完全メシ DELI」も好調で、7月末時点で30メニューを展開、2024年には、現代女性の食のニーズに応えた“おにぎりイノベーション”こと「冷凍 完全メシ DELI おにぎり」を発売、従来のカテゴリーではアプローチしきれなかった女性層を取り込むことに成功しています。

一方BtoB事業では、小売業様との協業として、小売業様で販売するお弁当・惣菜を完全メシ化するための基材の提供、健康経営を推進する企業様で完全メシを提供する社食事業の展開など、着実に広がりを見せています。また、外食・中食産業との協業も積極的に進めており、大阪マリオット都ホテル様や欧風カレーオーベルジーヌ様とのコラボの他、ファミリーレストランや宅配ピザチェーンとのコラボも進行中です。さらに、トヨタ様が推進するスマートシティToyota Woven Cityでの食の提供も行います。

マーケティング面では、日清食品が得意とするTVCM(空中戦)、店頭販促(地上戦)、SNS活用(サイバー戦)の三つの戦略を連動させ、ブランド認知の向上と売上拡大に成功しています。今後は、お客様に商品特性をより深く理解していただくために、SNSの活用と、店頭コミュニケーションやリテールメディアの展開に注力して、購入のラストワンマイルを強力にプッシュし、さらなる売上拡大を目指します。

新規事業はこれまで事業立ち上げ期のため、当社グループの利益を投入して成長してきましたが、黒字化の目途が立ち始めています。社食事業で2026年度、冷凍食品で2027年度、即席めん・即席ライスで2028年度の黒字化を目指し、2030年には市場価格換算で420億円の売上を達成し、国内複数事業の黒字化を実現していきます。

海外での展開も推進していきます。現在、冷凍商品、即席めんや即席ライスなど海外向けの商品開発を進めており、米国では6月のテスト販売実施後に、全国展開を行います。当社が行った各国のニーズ調査・消費者調査の結果、既存の販売網を活かせるメリットがあることも考慮し、米国でのスタートとなりましたが、今後、欧州などさらなる地域の拡大も想定しています。

日清食品ホールディングス株式会社代表取締役副社長・COO 日清食品株式会社 代表取締役社長 安藤 徳隆

「完全メシ」シリーズ

「完全メシ」シリーズ 常温品 全24種 「完全メシ」シリーズ 冷凍品 全34種

食のWell-beingに貢献するために、社員の学びは必須

2024年度は過去最高の売上収益を更新し、当社グループは順調に成長を続けています。しかし、会社の成長と社員一人ひとりの成長を取り違えてはいないか、自己の能力開発は十分に進んでいるかという課題意識を強く持っています。

グループの行動規範「日清10則」の一つに「知識と経験に胡坐をかくな。自己研鑽なき者に未来はない。」があります。このフィロソフィのもと、新入社員や若手社員だけでなく管理職も含めて、改めて自己研鑽の重要性を強く訴えています。社員には自らのキャリアデザインを描き、自分がどのようなビジネスパーソンになりたいのかを深く掘り下げることで個々の成長を促進しています。

組織人材ポリシーでも「ハングリーで自律的なキャリア形成」を社員一人ひとりに求めています。2020年度に設立した企業内学習システム「NISSIN ACADEMY」では、リーダー候補向けの選抜型育成研修や全社員が対象の階層別研修に加え、自己啓発支援を目的とした公開型プログラムなどを充実させています。2024年4月にはデジタル・リスキリングに特化した「NISSIN DIGITAL ACADEMY」を開講し、7領域47講座90回の講座を実施し、国内グループ会社社員(非製造部門)の約2人に1人が参加しています。延べ人数では5,500人超が参加しました。さらに、昨年秋からはマンダラートを活用した人材育成を開始しました。マンダラートは、大谷翔平選手が高校時代に活用としたことでも知られたツールで、9x9の合計81個のマス目の中心に目標やテーマを書き、その周囲に関連する要素や課題を展開することで、自身の目標達成に必要なスキルやマインドセットを体系的に整理・可視化できるものです。社員一人ひとりの自律的成長を加速させる手段として有効であると考えて取り入れました。

また、仕事や学びに全力投球するためには、健康であることが大前提です。社員自身が「健康」でいられるよう、2018年には健康経営宣言を発出し、2024年までの6年間で産業保健体制の構築、データ分析の強化などの取り組みを進めてきました。社員の健康と成長なくして、真のHuman Well-beingの実現はありえません。

食を通じて人類をもっと健康に、もっとHAPPYに

日清食品ホールディングス株式会社代表取締役副社長・COO 日清食品株式会社 代表取締役社長 安藤 徳隆

Apple社のCEOティム・クック氏は、かつて「将来 Appleが人類のために果たした最大の貢献は何だったかと問われたら、それは健康に関したこと、と答えるだろう」と語りました。Apple社はデバイスとアプリを活用し健康状態をモニタリングすることで疾病の発生を予測する、というアプローチで健康問題に取り組んでいます。一方、私たちはフードテックを駆使し、「未病対策」として疾病発生リスクを減らす根本的なソリューションを提供するという、全く異なる方法で人々の健康に貢献していきます。私が先頭に立ち、強力に推進していく覚悟です。

将来、例えばAIが人間の能力を超えるシンギュラリティが起きたとしたら、社会や人々の生活は激変するでしょう。しかし、どんな時代になっても人間が食べること、食を楽しむことは決してなくなりません。食欲のままに食べても健康になる、好きなものを好きな時に好きなだけ食べられる世界、これこそが食と健康のリフレーミングであり、人類の「食べる」という根源的な幸福に資する事業です。

一人で食べる時も、家族や友人と囲む食卓も、忙しい仕事や勉強の合間の食事も、深夜の夜食もお菓子も、すべての食シーンで人類をもっと健康に、もっとHAPPYにする食を提供していきます。インスタントフード“でも”ではなく、“だからこそできる”食の創出を目指し、食と健康のリフレーミングに挑み続けます。

日清食品ホールディングス株式会社代表取締役副社長・COO 日清食品株式会社 代表取締役社長 安藤 徳隆

最適化栄養食の基礎研究

最適化栄養食に関する基礎研究は、当初から継続的に取り組んできました。まず、最適化栄養食を継続的に摂取することで、各種バイタルデータの改善が確認されています。さらに、糖尿病や高血圧の患者向けだけでなく、シニア層や女性向けなど、多様なニーズに応じた最適化栄養食の開発にも注力してきました。例えば、女性向けの最適化栄養食では葉酸などの成分を強化することで、月経前や月経中の不快感を軽減する効果が確認されています。

最近では、慶應義塾大学との共同研究講座で最適化栄養食の抗老化作用に関する臨床試験を実施しました。その結果、DNAメチル化年齢の若返りが確認され、健康寿命の延伸が期待できる可能性が示唆されています。食を通じたWell-beingの向上を目指して、今後も基礎研究を継続していきます。

※ 生物学的年齢。加齢で進行するDNAメチル化の程度を測定、生物学的年齢の指標(vs暦年齢)。疾患リスクや死亡リスクと関連がある

VALUE REPORT
2025

WHO日清食品グループとは?[4.73MB]

  • グループ理念
  • 社会価値創造History
  • 日清食品グループの今
  • 価値創造プロセス
  • 日清食品グループの6つの資本
  • 日清食品グループのコアとなる強み

WHAT何を目指すのか?[3.56MB]

HOWどのように目指すのか?[19.7MB]

  • CSOメッセージ
  • CFOメッセージ
  • CIOメッセージ
  • 中長期成長戦略 2030
  • 成長戦略❶ 既存事業のキャッシュ創出力強化
    • 国内即席めん事業
    • 国内非即席めん事業
    • 国内TOPICS
    • 海外事業
    • 米州地域―米国
    • 米州地域―ブラジル/中国地域
    • アジア地域/EMEA地域
  • 成長戦略➋ EARTH FOOD CHALLENGE 2030
    • 気候変動問題へのチャレンジ
    • 資源の有効活用へのチャレンジ
  • 成長戦略❸ 新規事業の推進
    • 最適化栄養テクノロジーの多面展開
    • 完全メシを日本から世界へ
    • 最適化栄養食の基礎研究
  • 人的資本の拡充
  • 健康経営・人権への取り組み
  • 社外取締役パネルディスカッション
  • コーポレート・ガバナンス
  • 取締役・監査役

データ  [1.11MB]

  • 財務サマリー
  • 非財務サマリー/主な外部評価
  • 即席めんの世界市場データ
  • 会社情報・株式情報