カップヌードル「寒い日はとくにうまい 篇」
カップヌードル「寒い日はとくにうまい 篇」
企画意図
寒い日はとくにうまい。だって、カップヌードルはあったかいから。真実はいつだってシンプルで、だからこそ見過ごされがちだ。
雪国の学生たちの、雪原よりも純白な心が、私たちにそう教えてくれる。
いつの日からか冬の窓ガラスのように曇ってしまった視界を、晴らしてくれる。
青春と呼ぶには大げさかもしれないけれど、等身大で踊り、等身大で食べるその姿が、
心の奥の一番やわらかい場所にそっと触れる。2021年冬、そんなCMができました。
ストーリー


合唱祭を仕切るように、委員長が言った。
「寒い日はうまいうまいうまい。」
変な歌に合わせながら、小刻みにゆれた。
「ねぇ、男子ちゃんと踊ってよ。」
心地よい空腹を感じながら、小刻みにゆれた。
ソーシャルディスタンスのせいだろうか。
久しぶりに近づいたあの娘との距離に、僕の心はゆれた。
体がゆれているのか、想いがゆれているのか。
やがて、胸の奥がじんわりと熱くなっていくのを感じた。
僕は気持ちを隠すように、熱いカップヌードルを勢いよく流し込む。
スープがしみる。気持ちもほどけていく。
一瞬、湯気の向こうのあの娘と目が合って、
思わず麺といっしょに、僕は言いかけた「好き」を飲み込んだ。
撮影こぼれ話


帰宅すると、息子のCM初出演を喜ぶ母が目を輝かせながら聞いてきた。
一心不乱に体を揺らし続けた。総テイク数39、小刻みに体を揺らし続けた。ただそれだけだった。
塾の友達にも、気になる女子にも「今度カップヌードルのCM出るんだ!」って自慢しちゃったけどなんて言おう。
母は親戚中に「息子がCMに出ます!」と言いふらして、観賞会をすると大はしゃぎしている。
本当はCMが話題になって俳優デビューも、なんて夢見てたんだけど、そうはいかなそうです。
そりゃ日清だもんな。仕方ないよな。
どんなCMに仕上がったかはわからないけど、僕が少しでもかっこよく写っているよう願うばかりです。