1973〜1975

「コメ」への強い思い入れが思わぬ“落とし穴”になった。

発売前から好評を得ていた「カップライス」であったが、主婦のニーズに合わず、やむなく撤退せざるを得なかった。

カップライス
「エビピラフ」「ドライカレー」「チキンライス」「五目寿し」「赤飯」「中華シチュー」「さけ茶」の7品種があり、価格は「中華シチュー」が160円で、あとは200円だった。

1975 (昭和50) 年10月22日に発売した「カップライス」は、単にコメのインスタント化というだけでなく、日本人のコメ離れが進むなか、その消費を促す目的もあった。発売前に開いた試食会には政界の重鎮も出席し、その味を賞賛。マスコミは「米作農業の救世主」と報じた。
7品種を発売したが、売れ行きは好調で、とくに「ドライカレー」と「エビピラフ」の人気が高かった。生産設備に30億円を投資し、PRや試食販売にも従来以上に力を入れた。
しかし、発売1ヵ月を過ぎると、注文件数はそれまでの10分の1にも満たない状態になった。スーパーなどでは、一度はかごに入れた「カップライス」を戻して、インスタントラーメンを購入する主婦が多かった。なぜかと問うと、「ご飯なら家で炊けるけど、ラーメンは自分でつくれないから」という答えが返ってきた。
コメに対する思い入れが強すぎたあまり、主婦の心理にまで思い至らなかったのである。社内で検討を重ねた結果、「カップライス」の生産から一時撤退することになった。

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