「創造」「戦略」「執念」— 新社長安藤宏基、経営への意気込み。
日清食品の米国進出を軌道に乗せ、「日清焼そばU.F.O.」や「日清のどん兵衛」のヒットを手がけた安藤宏基が新社長に就任。その就任披露パーティーには政財界の重鎮が数多く出席した。


社長就任披露パーティー
東京と大阪で行われた社長就任披露パーティーでは、会長、社長が会場内を回って来賓へのあいさつと接待に努めた。パーティー会場の屋台には、「食足世平」にちなんで全国の郷土料理が並べられ、出席者に好評であった。
1985 (昭和60) 年6月27日、副社長の安藤宏基が社長に就任し、安藤百福は会長として新社長をバックアップすることになった。
安藤宏基は、1947年大阪府に生まれ、1971年に慶応義塾大学商学部を卒業、1972年7月に米国日清に取締役として入社、日清食品の米国進出計画推進の業務に関わり、これを軌道に乗せた。1973年7月に日清食品へ入社後は、開発部長、マーケティング部長を歴任。「日清焼そばU.F.O.」や「日清のどん兵衛きつね」の開発・販売では、アメリカで培ったマーケティング理論を駆使し、ヒットに大いに寄与した。
全社員に対する所信表明のなかで安藤宏基は、「創業者精神の継承」と「長期安定成長のための基礎作り」を核とし、イノベーションとマーケティングを経営の両輪とすることを誓った。加えて、「創造」「戦略」「執念」に徹し、「セクショナリズム」「官僚主義」「形式主義」を排除すると述べた。これは、本質を見失わないようにとの社員への呼びかけでもあった。
新社長就任から約1ヵ月後、東京と大阪で社長就任披露パーティーを開催。両会場には合わせて2,100人の招待客が集まり、華やかな雰囲気に包まれた。東京会場には、福田赳夫元首相、藤尾正行自民党政調会長、佐藤守良農水大臣、稲山嘉寛経団連会長、広中平祐京都大学教授など、大阪会場には芦原義重関経連名誉会長、大島靖大阪市長、山下俊彦松下電器社長など、政財界の重鎮が多数出席した。
挨拶に立った安藤宏基は「努力なくして成功はありません。ひたすら頑張り、有数の食品メーカーに育てるつもりでいます。それが、今日私を祝って下さった皆様の期待に応えるただ一つの道だと思います」と述べた。
日本の政治・経済をリードする来賓に祝福されながら、新生・日清食品は力強く船出した。