新分野へチャレンジし、グループの総合力を高める。
開発型企業として需要の創造と市場拡大に努める日清食品は、M&A (企業買収・合併) によって経営の多角化を推進。グループの総合力を高めながら、さらなる発展に備えた。
日清ヨークの「コアヨーグルト プレーン」
「美健賢食」をテーマに総合食品メーカーを目指す日清食品は、1990年代に入り、さまざまな企業をグループに加える多角化路線を推進した。
1990 (平成2) 年7月、乳製品メーカーのヨーク本社 (本社:東京都中央区) が日清食品グループの一員になった。かねてから交渉を進めていた資本参加について合意したもので、日清食品の持株比率は75%であった。
ヨーク本社は、ドリンクタイプのヨーグルトを最初に開発したメーカーで、これを主力製品にしていた。日清食品は従来から機能性食品の開発に力を入れており、ヨーグルトの生産に参入することは大いにメリットがあった。また、チルド食品の低温流通ネットワークを共有できるため、物流・販売体制の拡充にも役立った。同社は、1990年11月1日付で社名を日清ヨークに変更した。
日清ヨークの「ピルクル ミニ」
日清ヨークの「のむヨーグルト」
翌1991年1月には菓子業界の名門企業、シスコ (本社:大阪府堺市) への資本参加が合意に達した。日清食品の持株比率を60%とした。
シスコは1924 (大正13) 年の創業で、業界に先駆けてシリアルフーズ「シスコーン」を発売した老舗である。シスコのグループ参加は生産と販売の体制整備に役立つものであり、食品事業部の基盤強化に大きく貢献することが期待された。同社は1991年4月に社名を日清シスコに変更した。
日清シスコの「シスコーン フロスト」
日清シスコ東京工場
日清シスコの「ココナッツサブレ」
1991年2月、医薬品製造のメクトおよびメクトの販売会社である日本メクト (本社:東京都新宿区) との資本参加について合意。両社における日清食品の持株比率は、メクト65.3%、日本メクト51.3%となった。
メクト東北工場
メクトの医薬品
日清食品は、1960年代末からバイオテクノロジー関連の研究に着手し、1987年5月には日米の大学と協同研究を進めていた後天性免疫不全症候群 (エイズ) の検査・治療物質について、日米欧の11ヵ国で物質特許を出願していた。
メクトへの資本参加によって、日清食品グループの医薬品事業、バイオ事業は本格的にスタートすることになった。「食と健康に奉仕する」という創業時からの企業理念は、一層高い目標に向かって大きな一歩を踏み出した。