日清食品ホールディングスと東京大学の研究グループが「食べられる培養肉」の作製に日本で初めて成功。肉本来の味や食感を持つ「培養ステーキ肉」の実用化に向けて前進
日清食品ホールディングスと東京大学の研究グループは、2019年に世界で初めて牛肉由来の筋細胞を用いたサイコロステーキ状の大型立体筋組織の作製に成功した。2020年度に同研究は本格研究課題への移行が決定し、さらに研究を重ねてきた。
「食べられる培養肉」の作製には、2つの大きな課題があった。「食用可能な“素材”のみを使用すること」と「研究過程において食べられる“制度”を整えること」である。それまでの「培養肉」は牛肉由来の筋細胞と食用ではない研究用素材で作製していたが、十分に栄養成分を供給できず、立体筋組織の構築が困難な状況にあった。そこで、独自に「食用血清」と「食用血漿 (けっしょう) ゲル」を開発し、食用可能な素材のみを使用して細胞の生育に適した条件を整え、培養を可能にした。また、日清食品ホールディングスは「食の安全」に関する知見を生かし、「培養肉」を食べるまでのプロセスを構築し、東京大学の倫理審査専門委員会から承認された。
こうして、“素材”と“制度”という2つの課題をクリアし、2022年3月、「培養肉」の研究において日本で初めて*「食べられる培養肉」の作製に成功したのである。従来の機器を使った分析に加えて、人による官能評価ができるようになったことで、味、香り、食感などの “おいしさ” に関する研究開発に弾みがつき、肉本来の味や食感を持つ「培養ステーキ肉」の実用化に向けて大きく前進した。
この成果は、NHKや民放各局で報道されたほか、さまざまなメディアでも取り上げられ、大きな注目を集めた。
* 産学連携の「培養肉」研究において日本初