日清食品グループ

リセット
2006.06.19 日清食品

お知らせ

日清食品 食品安全研究所 滋賀県特産の伝統発酵食品「ふなずし」から 新規コレステロール低減乳酸菌NLB163株※1を発見

日清食品 食品安全研究所滋賀県特産の伝統発酵食品「ふなずし」から新規コレステロール低減乳酸菌NLB163株※1を発見

日清食品株式会社(社長:安藤宏基)の「食品安全研究所」(滋賀県草津市)は、古来から知られている滋賀県特産の伝統的発酵食品「ふなずし」から分離した乳酸菌、63株の生理作用を調べた結果、強いコレステロール低減作用※2を示すLactobacillus paracasei NLB163株を発見しました。この研究成果を2006年7月6日(木)、7日(金)に開催される「日本乳酸菌学会2006年度大会」(大阪大学コンベンションセンターMOホール)で発表いたします。

1.研究の背景

古来から食されてきた食品中に生存する、動物あるいは植物由来の様々な乳酸菌が注目され、整腸作用、有害菌抑制、花粉症抑制、アトピー性皮膚炎抑制など、生理作用に特化した乳酸菌の機能性研究が盛んに行われています。
今回、伝統的発酵食品として古来から知られている滋賀県特産の「ふなずし」から乳酸菌63株を分離し、各種生理作用の検討をすすめることといたしました。
まず、試験管内で強いコレステロール吸着及び胆汁酸※3吸着作用を持つ乳酸菌を選び出し、次いで、動物実験でコレステロール低減作用を調べました。

2.試験管内実験及び動物実験

「ふなずし」由来乳酸菌63株について、コレステロール吸着実験及び胆汁酸吸着実験を行いました。コレステロール吸着実験では、乳酸菌凍結乾燥物(生菌及び加熱死菌)をコレステロール溶液(100μg/mL)に30 mg/mLの濃度で懸濁し、37℃で1時間保温後、反応液の遠心分離上清※4中のコレステロール濃度を測定しました。未処理区と試験区の差から吸着コレステロール量を求め、吸着率35%以上を有効としました。胆汁酸吸着実験では、乳酸菌凍結乾燥物(生菌及び加熱死菌)をタウロコール酸(胆汁酸の一種)溶液(1.25 mmol/L)に15 mg/mLの濃度で懸濁し、37℃で2.5時間保温後、反応液の遠心分離上清中のタウロコール酸濃度を測定しました。未処理区と試験区の差から吸着タウロコール酸量を求め、吸着率40%以上を有効としました。その結果、NLB136株(生菌)、NLB162株(加熱死菌)及びNLB 163株(加熱死菌)の3乳酸菌株で、強いコレステロール吸着及び胆汁酸吸着作用を有することを確認しました。
さらに、試験管内実験で有効性が認められた乳酸菌3株について、マウスにおける高コレステロール食誘導高コレステロール血症※5に対する作用を調べました。NLB136株(生菌)、NLB162株(加熱死菌)及びNLB 163株(加熱死菌)の凍結乾燥物を5%含む高コレステロール飼料(0.5%コレステロール、0.1%コール酸ナトリウム(胆汁酸の一種)添加)でマウスを2週間飼育した後、血漿コレステロールを測定しました。対照マウスには乳酸菌の代わりにトウモロコシ澱粉を添加した飼料を与えました。その結果、高コレステロール飼料摂取により、マウスの血漿総コレステロールは顕著に増加しましたが、各乳酸菌は、血漿総コレステロール増加を有意に抑制しました。
この抑制作用は、非HDLコレステロール※6(動脈硬化症促進性のLDLコレステロール※7を含む)の増加抑制によるものでした。さらに、NLB162株及びNLB163株は、動脈硬化症を抑制するHDLコレステロールを有意に増加させました。これら3乳酸菌株の中で、NLB163株が一番強いコレステロール低減作用を示しました。

3.今後の予定

最近、プロバイオティクス※8乳酸菌に代表されるように、乳酸菌の機能性が明らかにされ、乳酸菌に対する健康維持への期待がこれまで以上に高まっています。また、発酵乳以外にも乳酸菌の機能性を訴求した発酵野菜飲料、清涼飲料水など、様々な形態の加工食品が市場でみられるようになりました。
弊社では、これまで10年以上にわたって乳酸菌の基礎研究を行ってまいりました。その過程で、弊社関連会社日清ヨーク(本社:東京都中央区 社長:関根勅夫)の主力商品、乳酸菌飲料「ピルクル」を特定保健用食品に結びつけた実績もあります。
今後弊社では、今回の研究成果を発展させ、また、将来的には即席めん事業以外の新規事業として確立することも視野に入れて、「食を通じて健康維持に貢献できる商品」の開発に取り組んでまいります。

【ご参考】 語句の説明

※1 NLB
Nissin Lactic acid Bacteriaの略

※2 コレステロール低減作用
近年、心血管疾患や脳血管疾患の原因とされる動脈硬化症が、健康上の問題となっています。動脈硬化症の主要原因として高コレステロール血症が知られており、血中コレステロールを適度に制御することが望まれています。

※3 胆汁酸
コレステロールの消化吸収に不可欠な消化液である胆汁の主要成分で、コレステロールを材料として体内(肝臓)で作られます。胆汁として腸管内に分泌された後、そのほとんどが体内に再吸収されます。吸着などにより腸管内から除かれると、コレステロール吸収抑制及び体内からのコレステロール排泄が促進され、体内のコレステロールが低減します。

※4 遠心分離上清
遠心分離により固体(菌体)と液体(上清)を分けたうちの液体のこと。

※5 高コレステロール食誘導高コレステロール血症
高脂肪食などコレステロール含量の高い食事を継続することにより発症する高コレステロール血症のこと。

※6 非HDLコレステロール
血中コレステロールから動脈硬化症抑制性のHDLコレステロール(俗に善玉コレステロールと呼ばれます)を除いたコレステロールのこと。
血中コレステロールは主にVLDLコレステロール、LDLコレステロール及びHDLコレステロールの3種類に分けられます。

※7 LDLコレステロール
血中コレステロールの中で、俗に悪玉コレステロールと呼ばれます。LDLコレステロールが高いと動脈硬化症になる危険性が高くなります。

※8 プロバイオティクス
腸内菌叢のバランスを改善し、宿主(人など)に有益な作用をもたらす微生物のこと。
ページトップヘ