日清食品グループ

リセット

持続可能な調達

方針

海外における原材料の生産過程には、生産地周辺に与える環境負荷、児童労働、強制労働、劣悪な労働環境など、さまざまな問題が潜んでいます。
日清食品グループは、「グリーン調達基本方針」を2007年5月に制定し、環境に配慮した原材料の調達を推進しています。また、製品の品質を保証するために、原材料から製品の製造、出荷に至るトレーサビリティ体制の構築に力を入れています。こうした取り組みを強化するため、「日清食品グループ持続可能な調達方針」を2017年9月に制定。食の安全に加え、地球環境と人権を尊重し、合法的に生産された原材料の調達を進めていくことを掲げています。その実現のためにはサプライヤーの協力も重要であることから、一次サプライヤーにも当社グループの調達方針を周知し、その内容を確認したことに対する署名を得ています。

目標

日清食品グループの環境戦略「EARTH FOOD CHALLENGE 2030」では、「持続可能であると判断できるパーム油調達の比率を2030年度までにグループ全体で100%」にすることを目標に掲げており、できる限り早期に達成できるよう取り組んでいます。また、国内即席麺事業については、「持続可能であると判断できるパーム油調達の比率を2025年度までに100%」にすることを目標としています。

パーム油の持続可能な調達比率 (目標) ※1
国内即席めん: 2025年度 100%
グループ全体: 2030年度 100%
RSPO認証パーム油の使用割合 (実績) ※1、2
2019年実績:20%
2020年実績:26%
2021年実績:36%
2022年実績:37.7%
搾油工場までトレースができているサプライヤーからの調達比率 (実績) ※1、3
2019年実績:100%
2020年実績:100%
2021年実績:100%
2022年実績:100%
  • ※1日清食品と米国日清はマスバランス、ハンガリー日清はセグリゲーションでの認証。マスバランスとは、認証パーム油が流通過程で他の非認証パーム油と混合される認証モデル。物理的には非認証油も含むが、その比率が最終利用段階まで厳密に記録され、購入した認証農園と認証パーム油の量は保証される。セグリゲーションとは、複数の認証された農園から得られた認証パーム油からなり、他の非認証パーム油とは混ぜ合わされることなく、最終製造者まで受け渡される認証モデル。生産農園を1つに特定することはできないものの、認証農園から生産された原料であることが保証される
  • ※2当社グループのパーム油の調達量に占める日清食品、米国日清、ハンガリー日清によるRSPO (持続可能なパーム油のための円卓会議) 認証パーム油の調達量
  • ※3いずれも国内グループ会社が対象

パーム油調達

日清食品グループでは、即席麺の揚げ油などにアブラヤシから採れるパーム油を使用しています。アブラヤシは、主にインドネシアやマレーシアといった熱帯地域で栽培され、一部の農園は熱帯雨林の破壊、生態系の破壊、泥炭地火災による温室効果ガスの排出、農園労働者の人権侵害などの問題を抱えていることが指摘されています。

パーム油に関する取り組みの方向性

当社グループは、NDPE※方針を含む「持続可能なパーム油調達コミットメント」の遵守、および持続可能なパーム油の調達拡大に取り組んでいます。
「持続可能なパーム油調達コミットメント」の遵守に向け、油脂加工メーカーとのエンゲージメント構築に加え、サプライチェーンの上流に位置する搾油工場 (ミル) やアブラヤシ農園に対する包括的な支援の必要性を認識しています。

  • No Deforestation, No Peat and No Exploitation (森林破壊ゼロ、泥炭地開発ゼロ、搾取ゼロ) の略。

具体的には、サプライヤーの名称や所在地 (位置情報) を集約したパーム油のミルリスト※1を作成・管理することで、トレーサビリティの向上に努めています。また、国際環境NGO 「世界資源研究所 (WRI)」が提供する衛星モニタリングツールを用いて、ミルや周辺のアブラヤシ農園が位置するエリアの森林や泥炭地の破壊リスクを検証しています。リスクが高いと判断されたミルは、購入元の油脂加工メーカーと事実関係を確認し、状況改善に向けた対応策を検討しています。リスクが高いミル周辺のアブラヤシ農園に対しては、外部の専門家とアンケートやダイアログを通じた現地調査を順次行い、生産地の環境や労働者の人権に対する影響を詳細にモニタリングしています。

さらに、サプライチェーンの最上流にあたるアブラヤシ農園までのトレーサビリティを2030年までに確保し、アブラヤシ農園が環境と人権に配慮したパーム油を製造できるよう、包括的な支援を行います。また、小規模農家を対象とした苦情処理メカニズム※2の整備を進め、小規模農家の課題や寄せられた苦情を第三者機関と確認・調査し、解決を目指します。加えて、森林破壊や泥炭地の破壊リスク、コミュニティの権利侵害リスクが特に高い地域から、森林フットプリント※3を順次導入していく予定です。

当社グループは、あらゆるステークホルダーと協力しながら、持続可能なパーム油のサプライチェーン構築に取り組んでいきます。

  • ※1ミルリストは以下のURLをご参照ください。
    ミルリスト
  • ※2人権の侵害を受けた事例について通報を受け付け、その状況を是正・改善する救済のメカニズム。
  • ※3企業のサプライチェーンや金融機関の投融資先の事業が影響を与える森林と泥炭地の総面積。

持続可能なパーム油調達コミットメント

日清食品グループは、NDPEを支持し、取引先などのステークホルダーの協力を得て、パーム原産地の環境と労働者の人権に配慮して生産されたことが確認できるパーム油を調達します。

  • 保全価値の高い (HCV: High Conservation Value) 地域および炭素貯蔵力の高い (HCS: High Carbon Stock) 森林の保護、森林破壊ゼロ
  • 深さに関わらず泥炭地の新たな開発禁止
  • 植栽や土地造成、その他開発のための火入れ禁止
  • 先住民族や地域住民の権利尊重、土地権侵害の禁止
  • RRSPOが定める「原則と基準」の遵守
    RSPOが定める「原則と基準」(Principles and Criteria for the Production of the Sustainable Palm Oil)
  • 農園まで含めたトレーサビリティの確保
  • 当社グループが定める「日清食品グループ人権方針」に従った、人権や労働者の権利尊重
    日清食品グループ人権方針

RSPO認証パーム油の調達

日清食品ホールディングスは、森林破壊の防止や生物多様性の保全などに配慮して生産されたことが第三者によって認証されているパーム油を調達するため、2017年10月に「RSPO」※1へ加盟しました。2019年3月からは、「カップヌードル」を製造する国内全工場でRSPO認証油を使用しています。現在、「カップヌードル」※2のパッケージには「RSPO認証パーム油」を使用していることを表す「RSPO認証マーク」をつけています。
日清食品ホールディングスは、多くのステークホルダーの話し合いを経て決まるRSPOの原則と基準に賛同し、RSPO認証パーム油の使用を推進するJaSPON (持続可能なパーム油ネットワーク) に2019年4月から理事企業として加入しています。

  • ※1Roundtable on Sustainable Palm Oil (持続可能なパーム油のための円卓会議) の略。持続可能なパーム油産業の振興や運営を行うことを目的として、2004年にWWF (世界自然保護基金) とパーム油に深く関連する企業により設立された国際非営利団体。本部はマレーシアのクアラルンプールにあり、RSPOの認証を受けたアブラヤシ農園から生産されたパーム油と、認証された事業者が流通・加工した製品にはRSPO認証マークが付けられる。会員には、生産・加工業者、メーカー、小売業者、環境NGOなど、世界中で4,000を超える (2020年6月現在) さまざまな立場の企業、団体が加盟しており、これらのメンバーは、RSPOによって認証された持続可能なパーム油を生産、供給、使用することを約束している。RSPOは、多様なステークホルダーが参加し、協議を重ねながら、持続可能なパーム油の生産・利用を目指し、状況の変化に応じて原則と基準の見直しを行っている
  • ※2レギュラーサイズの「カップヌードル」「カップヌードル シーフードヌードル」「カップヌードル チリトマトヌードル」3品が対象

アセスメントなどの実施

国内の油脂メーカーの調達先である一次精製工場やその先の搾油工場で、現地の法律に違反した行為が行われていないことを油脂メーカーとともに確認しています。

環境や人権への影響に関して疑義のある現地サプライヤーについては、油脂メーカーと協力して事実関係の確認と対策を行っています。具体的には、油脂メーカーが管理する苦情処理リストを通じ、現地搾油工場や農園をモニタリングするとともに、問題のある農園には是正指導や取引停止などの措置をとっています。

【2019年以降の措置実績】
農園までのトレーサビリティ強化などの是正指導: 7件
搾油工場や農園との取引停止: 3件

アジア地域におけるサプライチェーンマネジメント体制の強化

当社グループのサプライチェーン上つながりのあるパーム油小規模農家に対するダイアログ (直接対話) を2023年3月に実施しました。これは、「経済人コー円卓会議日本委員会※1」および「SPKS※2」の支援を受けて実施した取り組みです。

  • ※1ビジネスを通じて社会をより自由かつ公正で透明なものにすることを目的としたビジネスリーダーのグローバルネットワーク
  • ※22006年にインドネシアで設立されたパーム油小規模農家組合。農家の持続可能性に配慮したアブラヤシ生産を支援している。インドネシアの7つの地域において8,000以上の小規模農家とネットワークを持つ。小規模農家のデータ収集やマッピング、農家の組織化、生産性向上に向けたトレーニング、農家のISPO (インドネシア持続可能なアブラヤシプランテーション) やRSPO (持続可能なパーム油のための円卓会議) などの認証取得支援などを行っている
実施背景 当社グループでは、「アジア地域におけるサプライチェーンマネジメント体制の強化」を優先的に取り組むべきテーマとして位置づけている。中でも、パーム油小規模農家の人権リスクや、生産過程における森林破壊などの環境リスクが指摘されていることから、モニタリングの強化が求められている
実施目的 農家とのダイアログを通して、パーム油小規模農家やその周辺地域における人権・環境リスクを詳細に把握する
実施対象 ダイアログ参加者:パーム油小規模農家20名

実施プロセス

1. 調査項目の検討
パーム油の持続可能な生産・調達に関する9つの外部基準※や前回のダイアログ実施結果をもとに調査項目を検討。基本情報を確認する「農家プロフィール」に加え、「農園運営」「環境」「人権」の3つの分野および10の中核項目で構成
2. 調査対象の決定
当社グループのパーム油調達に関わるサプライチェーン上の特定のミルのうち、半径50km以内に位置する小規模農家を選定
3. 事前アンケートの実施 (2023年3月)
調査対象となる小規模農家のプロフィールを把握するため、家族構成や収入、認証制度の認知度などに関する事前アンケートを実施
4. ダイアログの実施 (2023年3月)
各調査項目に沿ってオンラインでダイアログを実施。「農園運営」「環境」「人権」について現状を把握し、小規模農家に対する当社グループの期待を伝達
5. フォローアップ・ダイアログの実施
ダイアログを通じて判明した懸念点に関する詳細な情報 (背景・原因・運用実態など) を、現地協力団体を通じて追加確認
  • 本件調査にあたり参照した9つの外部基準
    •Roundtable on Sustainable Palm Oil (RSPO) Independent Smallholder Standard, 2019
    •Roundtable on Sustainable Biomaterials (RSB) Principles and Criteria for Smallholder Groups, 2016
    •International Sustainability and Carbon Certification (ISCC) Independent Smallholder Group Certification Criteria, 2016 (ISCC 201-5, 202, 206)
    •Malaysian Sustainable Palm Oil (MSPO) Certification Part 2: General Principles for Independent Smallholders, 2013
    •Indonesian Sustainable Palm Oil (ISPO) Standard, Independent Smallholders (4 out of 7 principles), 2011
    •Rainforest Alliance & UTZ/RA Sustainable Agricultural Standard for Smallholders, 2019 (Draft to be published June 2020)
    •Fairtrade/Fairtrade Standard for Small-Scale Producer Organizations, 2019
    •公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会「持続可能性に配慮した調達コード (第3版)」
    •公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会「持続可能性に配慮したパーム油を推進するための調達基準」

調査項目と結果

ダイアログの結果、調査を行った小規模農家において、人権侵害や環境破壊など喫緊の対応が求められる課題はありませんでした。しかし、農園経営の総費用の約6割を占める肥料の値上がりが懸念事項として挙がりました。また、トラクターなどの運搬車両を保有していない農家は、アブラヤシの納品を仲介業者に頼らざるを得ず、手元に残る利益が目減りしていることもわかりました。こうした経済面における課題は、将来的に人権侵害や環境破壊といったリスクにつながる可能性があります。
さらに、作業効率を優先し、日々の農作業において保護具を正しく着用していない事例が確認されました。安全に作業効率を高める方法を指導しながら、小規模農家の労働安全衛生に関する意識向上を図ることが課題と認識しました。

今後の対応
当社グループは、今後もこうした調査およびダイアログなどを定期的に実施し、主要サプライヤーやパーム油農家を含むサプライチェーン全体に対して、当社グループが掲げる持続可能な調達方針などの遵守を求めるとともに、その実践状況の確認をしていきます。また、小規模農家などを取り巻く環境・社会状況と課題の把握に努め、改善に向けた施策をサプライヤーとともに考えていきます。
特に小規模農家に対しては、経済成長を促進しながら人権と環境のリスクを低減し、持続的に農業を行うことができるよう、前述の「パーム油に関する取り組みの方向性」をもとにさまざまな施策を検討します。中でも農園までのトレーサビリティを進めることは、農家の認証取得に必要となる所有地(プランテーション)の境界線の把握につながると考えられます。さらに、問題提起すべき潜在的リスクや懸念を吸い上げられるよう、実効的な苦情処理メカニズムの整備に向けて取り組んでいきます。

その他の原材料調達

日清食品グループは、製品の容器や包装、各種印刷物、段ボール、コピー用紙などに、適切な森林管理のもとで生産されたFSC®※ 認証紙を優先的に利用しています。

日清食品では、2020年9月から「カップヌードル」をはじめとする一部製品の段ボールにFSC®認証紙を使用しています。

明星食品では、FSC®認証紙および生物由来の資源を利用したバイオマスインキの使用を推進しています。「明星 中華三昧」(袋麺) の外装にFSC®認証紙を使用しているほか、「明星 一平ちゃん夜店の焼そば」の湯切りフタにはFSC®認証紙とバイオマスインキを使用しています。また、明星食品が国内で製造・販売する即席麺とスープ製品では、段ボールにFSC®認証紙を使用しており、2021年度中に全量切り替えを完了しました。

  • Forest Stewardship Council®の略 (森林管理協議会)。森林の適切な管理と持続可能な森林資源の利用と保全を図る制度

水産物

当社グループは、計画的な水産資源の管理のもとで生態系が保全され、かつ労働者の人権に配慮された漁業方法によって獲られた水産物の調達を目指しています。
MSC (海洋管理協議会) 認証やASC (水産養殖管理協議会) 認証などを取得した水産物の調達を進めており、すり身に使用するスケトウダラはMSC認証を取得したものだけを使用しています。認証を取得していない水産物 (イカ、エビなど) を調達する場合は、当社グループが漁場まで追跡し、水産資源管理に問題がないことを確認できているサプライヤーから調達しています。

大豆

日清食品が「油揚げ」の原材料として調達している大豆は、持続可能な方法で生産されたことを示すUSSEC (アメリカ大豆輸出協会) 認証のものです。

農作物

日清食品が原材料として使用しているネギとキャベツは、契約栽培されたものを使用しています。日清食品ホールディングスの担当者が農園に赴き、栽培記録と農薬使用記録を確認しています。

動物福祉 (畜産物)

抗生物質や成長促進剤などの動物用医薬品については、国家基準に合致した適正な使用方法を遵守しています。チキンエキスを納品する取引先には、鶏を不適切な環境 (夜間放置など) で飼育していないことを確認しています。なお、遺伝子組み換え動物やクローン動物は原材料に使用していません。また、食肉業者からは、動物福祉への取り組み状況について定期的に報告を受けています。

動物福祉に対する考え方

当社グループは、国際的に認知されているアニマルウェルフェア※の基本原則「5つの自由」に配慮します。

  • ・空腹および渇きからの自由
  • ・恐怖や不安、抑圧からの自由
  • ・肉体的な苦痛と不快からの自由
  • ・苦痛、怪我、傷害および病気からの自由
  • ・本来の行動がとれる自由
  • 動物の生活とその死に関わる環境と関連する動物の身体的・心的状態のこと

植物代替肉・培養肉の開発

世界的な人口増加や新興国の経済成長に伴って食肉需要が急速に拡大している一方で、家畜の生産には餌となる飼料や多量の水、広い土地を必要とするほか、メタンをはじめとする温室効果ガスを多く排出することから、地球環境に与える大きな負荷が問題となっています。
日清食品グループは、大豆たんぱくを主原料とした独自製法による「大豆ビーフ」を開発し、製品への使用を2016年から開始しました。その後、「大豆ポーク」や「大豆チャーシューチップ」を開発するなど、大豆ミートの使用を推進しています。
また、「培養肉」の研究を東京大学 大学院情報理工学系研究科 竹内 昌治教授の研究グループと共に2017年8月から開始しました。「培養肉」とは、従来の食肉の代わりとなる「代替肉」の一つで、動物の細胞を体外で組織培養することによって得られる肉のことです。
2019年3月には、牛肉由来の筋細胞を用いてサイコロステーキ状 (1.0㎝×0.8㎝×0.7㎝) のウシ筋組織を作製することに世界で初めて成功しました。さらに、2022年3月には「食べられる培養肉」の作製に日本で初めて成功しました。
近年、世界中で「培養肉」が研究されていますが、日清食品グループは、高度な技術を要する「培養ステーキ肉」の研究に取り組んでいます。現在は、幅7㎝×奥行7㎝×厚さ2cm、約100gの「培養ステーキ肉」を作製する基礎技術を2024年度中に確立することを目標としています。

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