日清食品グループ

リセット

次世代に求められる「培養肉」を実現せよ

研究室から
ステーキ肉をつくる。

新しい発想と技術によって世の中のために革新的な製品を生み出す「食創為世 (しょくそういせい)」の精神——
日清食品グループは新たなチャレンジとして
“持続可能な肉” である「培養肉」の研究を進めています。

将来の食肉の課題を解決する「培養肉」

世界的な人口増加や新興国の経済成長に伴って食肉需要が急速に拡大しており、国連食糧農業機関 (FAO) によると2050年には2007年比で1.8倍に上昇すると予測されています。また、家畜の生産には、餌となる飼料や多量の水、広い土地を必要とするほか、メタンをはじめとする温室効果ガスを多く排出することから、地球環境に与える大きな負荷が問題となっています。このまま食肉需要が拡大すると、供給が追い付かなくなる可能性があるのです。
こうした中、食肉不足を解決するサステナブルな食材として世界中で注目されているのが「培養肉」です。「培養肉」は、従来の食肉の代わりとなる「代替肉」のひとつで、動物の細胞を体外で組織培養することによって得られた肉のことです。家畜の肥育と比べて地球環境への負荷が小さいことや、広い土地を必要とせず、厳密な衛生管理が可能といった利点があるため、従来の食肉に代わる “持続可能な肉” として期待を集めています。

世界の食肉市場における今後のシェア予測

  • 出典:ATカーニーレポート (米国)

最も高度な技術を要する「培養ステーキ肉」

「植物ミート」や「培養肉」など、従来の食肉に代わる「代替肉」には、開発に要する技術的な難易度の差があります。日清食品グループは、最も高度な技術を要する「培養ステーキ肉」の開発に取り組んでいます。

「代替肉」の開発レベル段階

肉もどき
豆腐ステーキ、精進料理など。実際の肉とは、味や食感が大きく異なります。
植物肉
植物タンパクに科学技術を活用することで、実際の肉の味や食感により近づけたもの。
培養ミンチ肉
実際の肉から細胞を採取し、組織培養して増やしたもの。バラバラの筋細胞の集合体であり、肉本来の食感は再現できません。2013年には、オランダで「培養ミンチ肉」を使ったハンバーガーが実現しており、1つ約3,000万円という金額が話題となりました。
培養ステーキ肉
筋組織の立体構造を人工的に作製し、肉本来の食感を再現したもの。細胞同士を融合させ、細長い構造に変化させることが必要で、「培養ミンチ肉」と比較しても飛躍的な技術の発展が必要とされ、本物と同等の大きさの培養ステーキ肉は世界でまだ誰も実現していません。

日清食品グループの挑戦 培養ステーキ肉を実現する

日清食品グループでは、2017年の8月から東京大学と「培養ステーキ肉」の共同研究を開始。 肉厚なステーキ肉を実現するという、前人未到の挑戦をしています。

写真左

仲村 太志

日清食品グループ グローバルイノベーション研究センター
新規事業推進室 兼 健康科学研究部

写真中央

古橋 麻衣

日清食品グループ グローバルイノベーション研究センター
健康科学研究部

写真右

竹内 昌治

東京大学 大学院情報理工学系研究科
知能機械情報学専攻 教授
兼 生産技術研究所 教授

まだ誰も実現していない
“食の可能性”を求めて

「培養ステーキ肉」の可能性

日清食品グループは環境戦略「EARTH FOOD CHALLENGE 2030」を策定し、持続可能な社会の実現と企業価値の向上を目指したさまざまな取り組みを行っています。その一つとして「培養ステーキ肉」の実現に取り組んでいるのが、日清食品ホールディングス グローバルイノベーション研究センターの仲村太志と古橋麻衣です。

食肉の供給不足が予測される中、畜産に頼らない「培養肉」は、食料危機の解決のみならず、環境負荷の低減にも貢献します。また、厳密な衛生管理下での製造が可能なことから、有害微生物による汚染が少なく、食中毒や感染症のリスクを低減することができます。
さらに、「培養ステーキ肉」を実現することができれば、厚みのある肉を使ったさまざまな肉料理を作ることができます。
「まさに夢の肉です。しかし、誰も成しえていない『培養ステーキ肉』を、どうすれば実現できるのかと悩んでいました。そうした時に出会ったのが、東京大学の竹内教授でした」(仲村)

日清食品グループ×東京大学が出会って
実現した「培養肉」研究

東京大学 大学院 情報理工学系研究科 (東京大学 生産技術研究所 兼務) の竹内昌治教授は、もともと筋肉の組織を体外で立体的に形成する研究に取り組んでいました。培養細胞でできた筋肉はすでに創薬のテストモデルや次世代ロボットの研究など幅広い分野で使われており、竹内教授は「この技術を応用すれば『培養ステーキ肉』を作ることができるのでは」と確信していたといいます。しかし、その先進性から企業や大学側に研究の意図を理解してもらえず、十分な研究費を調達できない日々が続きました。
「そんな折に日清食品グループから声をかけていただきました。『培養ステーキ肉』を一緒に作ろうと話がまとまり、すぐに共同研究が始まりました」(竹内教授)

「培養ステーキ肉」
実用化への大きな一歩

日本だからこそ成し遂げられる

日本はもともと再生医療や筋組織の研究が進んでおり、組織を体外で立体的に構築する技術にも長けています。こうした技術力の高さに加え、日本独自の「ものづくり」技術が背景にあることから、日本には「培養ステーキ肉」をいち早く世に出せる土壌があります。
「生体内で行われている筋肉や内臓の構築を、体外で全くのゼロから作り上げるというのはチャレンジングな目標ですが、そこに挑むことに科学の面白さを感じます」(竹内教授)

研究の難関

肉本来の食感は筋肉に含まれる筋組織の立体構造から生み出されます。この立体構造を体外で人工的に作るためには、筋細胞を増やすだけでなく、筋細胞をより成熟 (細胞同士を融合させ、細長い構造に変化) させる必要があります。しかし、生体内環境と異なる体外で筋細胞を成熟させるためには、必要な栄養を行きわたらせ、細胞を適切に配置する技術が求められていました。
「それが本研究における最大の難関でした」(古橋)

世界で初めてサイコロステーキ状の
「培養肉」の作製に成功

日清食品グループと東京大学 生産技術研究所の研究グループは、ウシ筋細胞に培養過程でビタミンCを与えることで、成熟が促進されることを確認しました。また、厚みのある「培養肉」を実現するために、ウシの筋細胞を従来のように平面的に培養するのではなく、立体的に培養したところ、筋組織に特有の縞状構造 (サルコメア) を持つ、細長い筋組織の作製に成功しました。さらに、筋細胞の集合体を積層し、特殊な方法を用いて培養することにより、2019年に世界で初めてサイコロステーキ状 (1.0㎝×0.8㎝×0.7㎝) の大型立体筋組織を作ることに成功。肉本来の食感を持つ「培養ステーキ肉」実用化への大きな第一歩を踏み出しました。

「培養肉」ができるまで

STEP1 ウシの筋細胞を増やす

細かく刻んだウシ筋細胞に酵素を作用させ、細胞同士のつながりをバラバラにします。 その後、細胞が約1億個になるまで約1週間培養します。

STEP2 培養した細胞から「筋芽細胞モジュール」をつくる

培養した細胞とコラーゲンを混ぜ合わせたものを型に流し込み、細胞が肉本来の構造に近い状態で整列した薄いシート状の「筋芽細胞モジュール」をつくります。

STEP3 筋芽細胞モジュールを積み重ねる

形の異なる2種類の筋芽細胞モジュールを交互に積み重ねます。 両端を固定して縮まないようにした状態で培養を続けると、筋芽細胞モジュール同士が結着します。 30枚程度積み重ねるとおよそ1㎝の厚みになります。

STEP4 培養液を交換しながら培養

培養細胞にとって最適な成長条件を試行錯誤しながら培養します。

STEP5 7日間培養を続ける

7日間培養を続けることで、組織の中で細胞が成長し、 約1cm角のサイコロステーキ状の「培養肉」となります。

未来の食卓を創る

2024年度中に基礎技術の確立を目指す

日清食品グループは、「培養ステーキ肉」の基礎技術を2024年度中に確立することを目指しており、肉自体をより大きくすること、さらに肉本来の味や食感の忠実に再現することに目指して研究を進めています。
将来、「培養肉」は新たな “肉” の選択肢として、大きなマーケットに成長する可能性を秘めています。また、「培養肉」の技術は、牛肉に限らず、マグロやウナギなど、枯渇する資源へ適用範囲を広げていくことも可能です。「サイズやコストなど、まだまだクリアすべき課題は多いですが、毎日わくわくしながら研究に励んでいます。息子からも、『すごいすごい、早く作って』と言われるんです」(仲村)

人口増加による食肉の供給不足や環境負荷の増大といった地球規模の課題をブレイクスルーする可能性を秘めた「培養ステーキ肉」。それが当たり前のように食卓に並ぶ未来のために――日清食品グループはチャレンジを続けます。

ページトップヘ