研究の背景
食品安全研究所では、これまでも、この体調調節機能の研究の一環として、普段の食事で簡単にとれる発酵食品 (乳酸菌) の機能に注目し、コレステロール低下作用をもつ乳酸菌「NLB163」(*3) を発見するなどの成果をあげています。
一部の乳酸菌には肥満予防、改善効果があると一般に報告されていますが、その詳しい作用メカニズムは分かっていないのが現状です。そこで弊社では、乳酸菌のこの効果が、中性脂肪の吸収を抑制する作用に因ると考え、中性脂肪の消化酵素「膵 (すい) リパーゼ」(*4) に対する阻害作用を研究しました。
*1 NLB
Nissin Lactic Acid Bacteria の略。
*2 食品のもつ体調調節機能
食品の栄養 (1次機能)、味覚 (2次機能) に次ぐ、体調リズム調節、疾病の防止と回復などに係わる機能 (3次機能) を指します。
*3 乳酸菌「NLB163」の発見
滋賀県特産の伝統発酵食品「ふなずし」から分離した乳酸菌の中から、強いコレステロール低下作用を示すラクトバチルス パラカゼイNLB163を発見しました。本件は2006年6月19日のニュースリリースで発表済みです。
このコレステロール低下作用は動物実験の他、ヒト試験でも確認されています (2009年1月19日のニュースリリースで発表済みです)。
*4 膵リパーゼ
中性脂肪の消化吸収に関わる酵素で、膵臓で作られ、腸管内に分泌されます。
研究の成果
これらの乳酸菌の活用により、食事由来の中性脂肪の消化を阻害することで、脂肪の吸収を抑制し、肥満予防、改善に寄与することが期待されます。
*5 測定方法
乳酸菌250株の凍結乾燥物を中性脂肪の一種である「トリオレイン」を乳化した後、ブタ由来の膵リパーゼ液と反応させ、トリオレインから消化、生成された脂肪酸の量を測定した結果、50%阻害濃度 (IC50:酵素活性を50%阻害するために必要な物質の濃度) は各々784μg/mLおよび745μg/mLとなり、膵リパーゼ活性に強い阻害作用を持つことが確認されました。
今後の予定
弊社では今回の研究成果を、乳酸菌を使ったビジネスにつなげるとともに、新たな事業として発展させ、「食による健康」に貢献する予定です。