マテリアリティ

マテリアリティの特定

日清食品グループは、社会課題の解決と経済価値の創出に取り組むことで、持続的な成長を目指しています。その実現に向けて、事業に直結し、中長期的な企業価値向上に影響を及ぼす重要課題 (マテリアリティ) を社会情勢や経営環境の変化を踏まえながら特定しています。

2024年度は、CSRD/ESRS※が公表しているダブルマテリアリティ評価に関するガイダンスを参照し、マテリアリティの見直し分析を行いました。CSRD/ESRSで定められたESGに関する各トピックスをもとに、企業が環境・社会の変化に与える影響 (インパクト・マテリアリティ) と、環境・社会の変化が企業に与える影響 (ファイナンシャル・マテリアリティ) を特定しました。

今後、特定したマテリアリティに取り組むことで、創業者精神を体現しつつ、当社グループが向き合うべき社会課題テーマ「Planetary Health」と「Human Well-being」に挑んでいきます。

  • Corporate Sustainability Reporting Directive/European Sustainability Reporting Standards
特定プロセス
以下のステップでマテリアリティを特定しました。

Step1: 影響を受けるステークホルダーの抽出

社外の有識者が参加するサステナビリティ・アドバイザリーボードでの議論や従業員へのアンケート調査の実施を通じて、自社バリューチェーン全体で、自社事業の影響を受ける可能性のあるステークホルダーを抽出しました。

Step2:課題の抽出および課題の影響、リスク、機会の分析

ステップ1で抽出したステークホルダーに対し、気候変動や持続可能な調達といったESG課題に対して自社の事業が与える影響、リスク、機会を分析しました。ESGに関する各トピックスは、ESRSで定められているトピックスやESG評価機関などの要求項目から自社に関連する項目を参照しました。

Step3:重要性の評価・特定

各ESG課題に対して、環境・社会の変化が自社事業に与える影響(ファイナンシャル・マテリアリティ)、および自社事業が環境・社会の変化に与える影響(インパクト・マテリアリティ)の2つの観点から「影響度」と「発生可能性」を定量化し、評価マップを策定しました。
評価マップに基づき、当社グループのMVV (ミッション、ビジョン、バリュー)やグループ全体の事業構造、戦略との整合性を踏まえ、当社グループの重要課題 (マテリアリティ) としての妥当性を経営層と確認し、経営会議・取締役会での決議を経て決定しました。

経営戦略におけるマテリアリティ

「ファイナンシャル・マテリアリティ」、「インパクト・マテリアリティ」のいずれの観点においても極めて重要な7つのマテリアリティは、当社グループが優先的に取り組むべき重要な経営課題として、中長期成長戦略とも連動しています。「健康と栄養」については、中長期成長戦略における成長戦略テーマに「新規事業の推進」を掲げ、「完全メシ」ブランドを展開しています。「気候変動」「生物多様性」「森林破壊」「持続可能なバリューチェーンマネジメント」に関しては、環境戦略「EARTH FOOD CHALLENGE 2030」で掲げた目標とも連動させながら、省エネルギー施策の実施や再生可能エネルギーの導入、環境に配慮した原材料の調達を推進しています。「人材開発」においては、人材を中長期成長戦略実行の基盤と捉え、「グループ理念研修」をはじめとした社員と組織を活性化するためのさまざまな施策を行っています。
また、2025年度からは、取締役を含む役員報酬の業績評価に、気候変動や持続可能な調達などマテリアリティに関連する目標の達成度合いを反映しています※。

  • 取締役の役員報酬における基本報酬の業績連動幅は0~50%、執行役員については-20~+20%、最大40%の範囲です。ESGに関する目標の評価の比重は役員ごとに異なります。

役員報酬 [PDF 20.3MB]

影響およびリスク・機会と目標

当社グループでは、中長期的な企業価値向上に向けて取り組むべきマテリアリティの影響およびリスク・機会を分析しています。そのうち、「ファイナンシャル・マテリアリティ」、「インパクト・マテリアリティ」のいずれの観点においても、極めて重要なマテリアリティについて、以下のとおり目標を設定し取り組んでいます。

1. 健康と栄養/製品の安全・安心

項目 概要 影響度 発生可能性 総合評価
主なリスク
  • 栄養不良の二重負荷をはじめとした健康・栄養課題がもたらす市場購買力の低下リスク
  • 栄養課題の改善に向けた規制強化への対応に必要なコスト増加リスク
極めて重要
主な機会
  • 消費者の健康志向に応えるより栄養価の高い製品の開発や販売による売り上げ増加
  • 消費者のさまざまなニーズや志向に合わせた多様な製品提供による市場拡大
  • 安定した品質の製品提供によるブランドへのロイヤリティ向上
目標
  • 2030年度までに、ウェルネス製品の当社グループ国内販売額を230億円に拡大
  • 2030年までに、「NISSIN-NPS」(NISSIN Nutrient Profiling System※) で栄養価が改善した製品の割合を50%に増やす (2020年比)
  • 2030年までに、「NISSIN-NPS」で定められた基準を満たす栄養価の高い製品を150種類発売
  • 製品の栄養価をスコア化する弊社独自の栄養プロファイリングシステム
進捗 / 関連取り組み 健康と栄養

2. 人材開発

項目 概要 影響度 発生可能性 総合評価
主なリスク
  • 労働市場における人材不足により、自社工場などで人材の採用や確保ができず、事業活動に支障をきたすリスク
  • 労働市場における人材不足により、優秀な人材の採用や確保ができず、幹部候補生の育成に支障をきたすリスク
極めて重要
主な機会
  • 多様な人材獲得によるイノベーションの創出と競争力向上
目標
  • 2025年度末までに、女性管理職比率10%以上の達成
  • 2030年度の男性の育児休業取得率85%の達成
進捗 / 関連取り組み 人材開発
Human Capital Report [PDF 6.8MB]

3. 気候変動

項目 概要 影響度 発生可能性 総合評価
主なリスク
  • 環境法規制違反による罰則・罰金リスク
  • 環境法規制強化による対応コスト増加リスク
  • サプライチェーンにおける環境問題に関する訴訟リスク
  • 気候変動の影響により原材料調達および商品提供が困難となるリスク
極めて重要
主な機会
  • フードテックを活かした植物性代替食の開発・使用
  • サプライヤーマネジメント強化による原材料調達の安定化
  • 大規模自然災害の頻発による、防災備蓄製品としての需要増
目標
  • 2030年までに、Scope1+Scope 2 42%削減 (2020年比)、Scope 3 25%削減 (2020年比)
  • 2030年度までに、国内外の事業活動で利用する電力における再生可能エネルギーの調達比率60%の達成
  • 2050年度までに、国内外の事業活動で利用する電力における再生可能エネルギーの調達比率100%の達成
進捗 / 関連取り組み 気候変動
EARTH FOOD CHALLENGE 2030

4. 生物多様性/森林破壊/持続可能なバリューチェーンマネジメント

項目 概要 影響度 発生可能性 総合評価
主なリスク
  • 環境法規制違反による訴訟リスク
  • 環境法規制強化による対応コスト増加
  • サプライチェーンにおける環境問題に関する訴訟リスク
  • 生物多様性の損失等の影響により原材料調達に支障をきたすリスク
極めて重要
主な機会
  • フードテックを活かした植物性代替食の開発・使用
  • サプライヤーマネジメント強化による原材料調達の安定化
目標
  • 2030年度までに、グループ全体の持続可能なパーム油調達比率100%の達成
  • 2025年度までに、国内即席麺の持続可能なパーム油調達比率100%の達成
  • 搾油工場までトレースできているサプライヤーからの調達比率100%維持
  • 2030年度までに、国内における即席麺具材の植物性たんぱく質の使用量を年間1,100トンにまで引き上げ
進捗 / 関連取り組み 持続可能な調達

マテリアリティの全社リスク管理への統合

マテリアリティをはじめとしたサステナビリティに関連するリスクは、当社グループの成長戦略実現に影響を及ぼすことから、代表取締役副社長・COOを委員長とする総合リスク対策委員会と連携を図りながら、全社的なリスクとして管理しています。