日清食品グループは、全従業員が常に健康を維持し、能力を最大限に発揮して業務に当たることを重要な経営課題の一つと考えています。
2018年8月には「日清食品グループ健康経営宣言」を策定し、健康経営の推進体制を構築しました。
また、日清食品ホールディングス 代表取締役社長・CEOの安藤宏基が責任者となり、従業員の健康に関するさまざまな取り組みを実施しています。取り組みの内容は、当社グループの役員が集まる経営会議や、当社グループの担当者と労働組合の代表者が議論する労使委員会などで定期的に報告しています。
「美健賢食」-美しく健康な体は賢い食生活から-
食を通じてお客さまの健康づくりに貢献することは、 私たちの大きなミッションの一つです。
そのためには、まず社員が健康でなければなりません。 当社グループは、社員の心身の健康保持・増進を、重要な経営課題と位置付けます。 社員の自主的な健康活動を期待し、 会社はこの積極的支援や、 社員が健康に働ける労働環境づくりに、取り組んでいきます。
日清食品ホールディングス株式会社
代表取締役社長・CEO 安藤宏基
食を通じてお客さまの健康づくりに貢献するためには、従業員一人ひとりがWell-being※1と高いパフォーマンスを両立する必要があることから、健康経営の最終的な目標指標 (KGI) を「働きがいスコア」、「プレゼンティーイズム※2」、「アブセンティーイズム※3」の3つに設定しています。KGIの中でも、プレゼンティーイズム値※4の向上を重視しており、平均値95%の達成を目指してさまざまな施策を実施しています。
健康経営戦略マップを策定し、個別の施策がどのようにKGIの達成につながるかを可視化することで、健康経営を戦略的に推進しています。
生活習慣病の早期発見、早期治療のため、社員全員を対象に法定健診で義務づけられている基準を上回る検査項目数で健康診断を実施しています。また、健康診断結果を分析し、医療機関での診断が必要と考えられる社員には、保健指導や産業医との面談だけでなく、病院の紹介も行っています。
日清食品籍の社員※1を対象にした人間ドックについても、従来は管理職に限って実施していましたが、2019年度からは45歳、50歳、55歳の社員にも拡大しました。
健康診断や人間ドックで再検査や精密検査が必要となった社員には、検査受診を積極的に呼びかけるとともに、検査費用は会社が全額負担しています。なお、治療しながら勤務する社員には、本人の希望に応じて統括産業医や産業保健看護職
(保健師、看護師) が助言することで、仕事と治療の両立を支援しています。
工場では、社員の転倒による労働災害を未然に防ぐため、健康診断の検査項目に含まれていないロコモ度テスト※2を実施しています。移動機能が低く、転倒リスクが高いと判断された社員には、転倒防止セミナーを開催しています。
転倒防止セミナーの様子 (日清食品 関東工場)
健康、医療、介護、育児、メンタルヘルスなどの相談を受け付ける社外サービスと連携し、従業員とその家族※が、メールや電話で24時間いつでも相談できる窓口を設置しています。2018年4月からは従業員を対象に、産業医療職 (産業医、保健師、看護師) による健康相談窓口を開設し、2020年5月からはオンラインでの相談受付も開始しました。産業医と連携することで、受け付けた相談内容を病気の予防、再発防止、さらには休職した従業員の復職支援に生かしています。
従業員が健康について相談できるよう、日清食品ホールディングス 東京本社、大阪本社、the WAVE、日清食品 直轄工場 (関東工場、静岡工場、関西工場、滋賀工場、下関工場) に産業医や保健師を配置して相談窓口を設けています。
これまでは、従業員2,000名に対し1名の割合で保健師を配置していました。2025年度からは保健師を増員し、従業員1,000名に対し1名の割合に変更することで、体制を強化しました。2027年度までに、従業員700名に対し1名の割合にまで引き上げることを目指しています。
なお、2024年度には産業医療職による面談 (健診後保健指導を含む) を659件実施しました。また、産業医療職による全体会議を2021年から年2回実施し、産業医療職が果たすべき役割や、全国事業所の課題や実施施策、保健指導や健康相談事例などを共有しています。
当社グループの健康経営をより主体的に運営するために、日清食品ホールディングスは、国内グループ会社の従業員※とその家族を加入の対象とした「日清食品グループ健康保険組合」を2024年4月に設立しました。これによって、従来は外部で管理されていた従業員の健康医療情報 (診療結果や特定健診結果など) を当社グループ内で管理できるようになりました。個人を特定しない形で情報を詳細に分析し、健康保持や健康増進の施策に活用しています。
具体的には、従業員とその家族のWell-being向上を支援するため、無料歯科検診や予防接種の費用補助など、健康保険組合に加入している事業所と連携した取り組み (コラボヘルス) を推進しています。
従業員一人ひとりが、心身の状態や症状にあった施策を選択して健康増進に取り組めるよう、「からだの健康」「こころの健康」「はたらく環境」の3つのカテゴリーで複数の施策を展開しています。
従業員の「からだの健康」は、Well-beingと高いパフォーマンスを両立するための基礎であることから、運動、食事などをテーマにした施策を展開しています。中でも、運動の促進や女性の健康課題を重点テーマとして取り組んでいます。
従業員の運動を促進するため、Apple Watchのアプリを活用し、従業員285名に3カ月間継続して有酸素運動を行ってもらいました。また、運動と脳機能の関係性を検証するため、脳機能の現状を「脳年齢」で表す検査を受検してもらい、運動を継続する前と運動を継続した後の脳年齢の変化を比較しました。その結果、平均で8,000歩/日以上歩いた従業員には脳年齢が若返る傾向が見られ、毎日継続して運動すると脳が活性化することがわかりました。
| サンプル数 (人) | 平均年齢 (歳) | 脳年齢変化平均 (歳) | |
|---|---|---|---|
| 基準値※以下 | 115 | 39.6 | -2.50 |
| 基準値※以上 | 130 | 46.7 | -4.88 |
より多くの従業員が参加できるように、Apple Watchのアプリに加え、スマートフォンのアプリも活用して実施しました。従業員350名に1カ月間継続して有酸素運動を行ってもらい、前回同様に、運動を継続する前と運動を継続した後の脳年齢の変化を比較しました。その結果、前回から継続して参加した従業員の脳年齢は、今回から参加した従業員の脳年齢と比べて若返る傾向が見られ、運動を継続する期間が長いほど脳年齢の変化が大きいことがわかりました。今後も、この結果を活用した運動促進施策を継続していく予定です。(参加者満足度 97.7%)
| サンプル数 (人) | 平均歩数 (歩/日) | 脳年齢変化平均 (歳) | |
|---|---|---|---|
| 参加した従業員の合計 | 390 | 9,907 | -2.56 |
| うち第1回から継続して参加した従業員 | 163 | 10,222 | -2.73 |
| うち第2回から新たに参加した従業員 | 227 | 9,667 | -2.44 |
女性はライフステージによって生理痛やPMS (月経前症候群)、不妊、妊娠・出産、更年期などの健康課題を抱えています。そこで、「Plus One Option」をテーマに、女性特有の健康課題の解決につながる複数のプログラムを用意し、自身の状況に応じて選択できるようにしています。また、女性従業員とともに働く男性従業員に向けた正しい知識の啓発にも取り組んでいます。
| 従業員参加型施策 |
|
|---|---|
| 環境整備 |
|
従業員の健康意識を高めるため、健康診断の検査項目に含まれていない項目 (血管年齢、骨の健康度、体組成、口内健康、自律神経、推定野菜摂取量) を測定するイベントを実施しています。産業医療職が測定結果をふまえて助言することで、従業員が自身の健康状態を把握して健康増進に取り組めるよう支援しています。2025年度は、当社グループの国内8事業所で実施し、合計で1,359名の従業員が参加しました。(参加者満足度92.7%)
日清食品ホールディングス (東京本社、the WAVE) の社員食堂では、従業員向けに、33種類の栄養素とおいしさの完全なバランスを追求した「完全メシ」メニューを提供しています。これによって、従業員一人ひとりの栄養に対する意識の向上と生活習慣の改善につながると考えています。
また、社員食堂を食事提供の場としてだけではなく、従業員のコミュニケーションやリフレッシュの場としても活用することで、従業員のWell-being向上を目指しています。
精神面の不調は表面化しづらいため、会社が従業員一人ひとりの「こころの健康」状態を可視化し、積極的に関与することが重要です。そこで、アンケート調査とApple Watchで収集したデータをもとに、従業員が自身のストレス状況を把握し自発的に対処するセルフケアの支援やストレスチェックでストレスの度合いが高いと判断された従業員 (高ストレス者) に対するフォローアップの強化など、心理的に良好な状態を維持するための施策を実施しています。
プレゼンティーイズムの予防や改善の一環として、2022年度から慶應大学と「プレゼンティーイズム」の可視化に関する共同研究を進めており、2023年度には自律神経活動※1と生産性に関連があることを実証しました。2024年度には、運動による「プレゼンティーイズム」への影響を検証するため、社員約250名にApple Watchを貸与し、2024年8月から休日を含む4カ月間、心電図データと運動量のデータを毎日収集しました。また、普段通りに生活する期間と運動量を増やす期間を設定し、運動量を増やした期間の前後に「心理的不安※2の度合い」「うつ傾向※3」「プレゼンティーイズム値」についてアンケート調査を通じて各項目の値を測定しました。それらのデータを慶應大学が統計的に解析した結果、運動によって心理的不安が軽減することが実証されました。今後、この実証結果を社員の運動促進プログラムに活用し、Well-being向上を目指します。
運動と心理的不安の関係
睡眠不足は、従業員の精神面の不調や、生産性とワーク・エンゲージメント※の低下の要因の一つとされています。そこで、睡眠不足の解消や睡眠の質の改善を目指すプログラムを実施しました。マットレスの下に設置したセンサーで収集した従業員の睡眠データをもとに、専門家が従業員一人ひとりに睡眠における課題などをフィードバックし、従業員には自身の生活習慣や普段の行動を見直してもらいました。その結果、プログラム終了後の計測データでは、プログラム開始前と比べて、不眠症、うつ、精神疾患リスクの軽減、高ストレス者数の減少の傾向が見られました。
高ストレス者は、精神的な不調により休職や退職をする傾向が高く、産業医との面談の実施率が低い傾向があるなど、会社が積極的なフォローアップを行うことが求められています。そこで、2025年度からは、高ストレス者を対象に産業医との面談を積極的に案内しています。また、ストレスチェックを実施した3カ月後に、アンケートによる調査や保健師による面談を通じてストレス状況を確認し、精神的な不調の早期発見とケアに努めています。
従業員の「はたらく環境」は、ワークライフバランスや生産性への影響が大きいことから、積極的に取り組むべき重要なテーマです。そこで当社は、会社に対する満足度や部署内におけるコミュニケーションの状況などについて調査を行い、その結果をもとに、従業員が個性や能力を発揮できるよう環境の整備を進めています。また、働き方が多様化する中、多様な属性や価値観を持つ従業員一人ひとりが働きやすいよう、育児や介護との両立を支援する制度の整備や、有給休暇の取得促進などにも取り組んでいます。
当社グループに限らず、他社の健康経営の推進を支援するための活動も行っています。健康測定イベントで他社の社員の参加を受け入れているほか、講演会で当社グループの取り組み事例や知見を取引先などに紹介しています。また、サプライチェーン上の取引先との連携を強化し、当社グループと取引先のさらなるWell-being向上を目指すため、「パートナーシップ構築宣言」を掲げています。
| 朝食 欠食率 | 間食 摂取率 | 適性体重 維持者率 | 運動 習慣者率 | 喫煙率 | 適性 飲酒率 | 睡眠 充足者率 | ストレス 解消者率 | 上長との個別 面談実施率 | 平均月間 所定外労働時間 | 平均年次有給 休暇取得率 | 育児・介護 制度利用率 | 生活習慣病 有所見者率 | ワーク・ エンゲージメント | 高ストレス者率 | 疾病による 休職者数 | 離職率 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 「完全メシ」購入社員割引・自動販売機設置 | ● | ● | ● | ● | |||||||||||||
| オフィスグリコの設置 (2015年6月導入) | ● | ● | |||||||||||||||
| 「食生活改善」オンラインセミナー (2024年11月実施) | ● | ● | ● | ● | ● | ||||||||||||
| セロトニン生成を増やす食事で幸福度向上を目指す 「食生活改善」オンラインセミナー (2025年3月実施) | ● | ● | ● | ● | ● | ||||||||||||
| 「トレーニング法、食事法」オンラインセミナー (2024年1月実施) | ● | ● | ● | ● | ● | ● | |||||||||||
| チーム制で運動量目標達成を目指す運動促進アプリ提供 (2023年4月開始) | ● | ● | ● | ● | ● | ||||||||||||
| 心身の調子を整えることを目的とした「ピラティス体験講座」 (2024年1月実施) | ● | ● | ● | ● | ● | ||||||||||||
| 身体の不調改善を目的とした「歩き方講座」 (2024年9月~10月実施) | ● | ● | ● | ||||||||||||||
| 禁煙補助薬を活用した保健師並走型の禁煙プログラム (2023年12月開始) | ● | ● | ● | ||||||||||||||
| 「適正飲酒」セミナー (2025年7月実施) | ● | ● | ● | ||||||||||||||
| 「睡眠習慣改善」オンラインセミナー (2023年6月、2025年3月実施) | ● | ● | ● | ● | |||||||||||||
| OuraRingを活用した睡眠改善プログラム (2025年3月開始) | ● | ● | ● | ● | |||||||||||||
| 生産性向上を目的として研究所勤務の従業員を対象に オフィス内整体サービスを提供 (2024年2月~3月実施) | ● | ||||||||||||||||
| ヘルスリテラシーの向上を目的とした、 オンライン動画サービスの提供 (2024年8月導入) | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | |||||
| エンゲージメントの向上を目的とした、 上長との1on1ミーティングの実施 | ● | ● | ● | ● | ● | ||||||||||||
| 所定外労働時間が多い従業員の上長への注意喚起実施 | ● | ● | ● | ● | ● | ||||||||||||
| 採用時の有給付与日数拡大 | ● | ||||||||||||||||
| 全社有給休暇取得目標の設定 | ● | ● | |||||||||||||||
| 失効年次有給休暇の育児利用 | ● | ||||||||||||||||
| 非常時保育料補助・ベビーシッター割引券交付 | ● | ● | |||||||||||||||
| 介護に関する知識啓蒙を目的とした介護セミナーの実施 (2025年3月実施) | ● | ● |
対象:日清食品籍の社員 (日清食品ホールディングス、日清食品チルド、日清食品冷凍などへ出向している社員も含む)
| 指標 | 2023年度 | 2024年度 | 2026年度目標 | |
|---|---|---|---|---|
| 生活習慣病の改善指標 | ||||
| 1 | 定期健診受診率※1 | 100.0% | 100.0% | 100%維持 |
| 2 | 再検査・精密検査受診率※1※2 | 85.4% | 87.9% | 90%以上 |
| 3 | 保健指導実施率※1※2 | 90.4% | 99.6% | 100% |
| 4 | 特定保健指導実施率※1 | 73.5% | 80.6% | 80%以上 |
| 5 | 生活習慣病有所見者率※1 | 39.9% | 42.8% | 30%以下 |
| 6 | 適正体重維持者率※1 | 67.2% | 67.8% | 70%以上 |
| 7 | 朝食欠食率※1※3 | 30.4% | 30.7% | 30%以下 |
| 8 | 間食摂取率※1※4 | 22.0% | 19.0% | 18%以下 |
| 9 | 運動習慣者比率※1※5 | 30.0% | 29.5% | 35%以上 |
| 10 | 喫煙率※1 | 19.3% | 19.0% | 14%以下 |
| 11 | 女性の健康に関するセミナー実施回数※1 | 4回 | 2回 | 5回 |
| 12 | 適性飲酒率※6 | 92.7% | 81.1% | 85%以上 |
| 13 | 睡眠充足者比率※1※7 | 62.8% | 64.0% | 65%以上 |
| 14 | 高血圧ハイリスク者率※1※8 | 0.4% | 0.3% | 0.4%以下 |
| 15 | 高血圧治療中率※1※9 | 87.9% | 86.5% | 100% |
| メンタルヘルス対策推進指標 | ||||
| 16 | ストレスチェック受検率※1 | 93.9% | 94.9% | 98%以上 |
| 17 | 高ストレス者率※1 | 13.9% | 12.8% | 10%以下 |
| 18 | セルフケア関連動画視聴率 | ― | 20.5% | 60% |
| 19 | 上長との個別面談実施率 | 73.2% | 72.3% | ― |
| ワークライフバランスの推進指標 | ||||
| 20 | 平均月間所定外労働時間 | 21.6時間 | 21.4時間 | ― |
| 21 | 平均有給休暇取得率 | 15.6日 | 13.9日 | ― |
| 22 | 育児休業取得率 (女性・男性)※10 | 76.9%・64.6% | 120.0%・66.3% | ― |
| 23 | 介護休業取得者数 (人) | 0 | 2 | ― |
| 健康経営の最終的な目標指標 | ||||
| 24 | アブセンティーイズムの損失※1※11 | 2.2日 | 2.4日 | 2日以下 |
| 25 | 疾病による休職者数※12 | 39名 | 48名 | ― |
| 26 | プレゼンティーイズムの損失※1※13 | 94.0% | 94.3% | 95%以上 |
| 27 | ワーク・エンゲージメントの向上※1※14 | 2.5 | 2.5 | 3以上 |
| 28 | 離職率 | 4.6% | 5.4% | ― |
| 29 | 働きがいスコア※15 | 78% | 75% |
ターゲット目標 85% コミットメント目標 70% |
| 30 | 健康投資額※1 | 202百万円 | 210百万円 | ― |