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日清食品ホールディングス株式会社常務執行役員・CSO 西川 恭

CSOメッセージ

創業者からつながる“食への想い”と事業面での“多彩な強み”を持続的な成長のエネルギーに

日清食品ホールディングス株式会社常務執行役員・CSO 西川 恭

日清食品ホールディングス株式会社
常務執行役員・CSO

西川 恭

外部視点で捉え直す日清食品グループの「強みと課題」

日清食品に入社する以前、私は28年間にわたって銀行に勤務し、ドイツ、アメリカ、香港など海外での豊富な経験を積み重ねた後、医療機器のグローバルメーカーに転職し、約6年半にわたって欧州事業のマネジメントを担当しました。これらの経験を通じて、ガバナンスや人材育成に関する知見や、グローバルな視点を培うことができました。

そうした経験を評価いただき、2024年6月に常勤社外監査役(独立役員)として日清食品グループの経営に参画することになりました。今回のCSOの就任前から、国内外の子会社や工場を視察するなど約1年をかけてじっくりと事業活動を見てきました。

現在はVUCA(変動性、不確実性、複雑性、曖昧性)やBANI(脆さ、不安、非線形、理解不能)といった言葉で表されるように、非常に不確実性が高い時代です。そうした環境下で企業が勝ち残っていくためには、他社の追随を許さない独自の強みと、ブレない芯が必要になると考えています。そうした観点からも日清食品グループには差別化された強みや、創業家のリーダーシップに代表される芯の強さがあると確信しています。

まず「カップヌードル」に代表される圧倒的なブランド力があります。また、消費者の嗜好をデータで捉えたうえで、“刺さる”マーケティングを展開するクリエイティビティは、国内シェアNo.1の原動力であると同時に、外部から優秀な人材を引き付ける魅力にもなっています。加えて、国内外でバランスの取れた事業ポートフォリオ。特に海外事業の伸長は著しく、今やグループ利益のほぼ過半を占めており、その存在感は一層顕著になっています。さらに、創業以来のイノベーションと、それを支えるフードテックも大きな強みです。先進的な技術のベースには、長年にわたって積み重ねてきた価値ある基礎技術があり、当社グループの商品価値を力強く支えています。

そしてこれらの強みの根幹には、トップマネジメントによる強いリーダーシップと、グローバルに浸透した企業文化・カルチャーがあります。私が特に感じるのは、創業者から今につながる“想い”の強さです。これは「食」の大切さに対する信念に根差したものであり、近年のテーマに掲げる「Planetary Health」や「Human Well-being」に象徴される、社会課題に真正面から取り組もうとする姿勢、そして「最適化栄養食」プロジェクトを通じた食と健康の再定義への挑戦にもつながっています。

創業者の“想い”が組織全体に深く浸透していることは、Mission・Vision・Valueに対するグループ従業員の共感度が、2024年度の調査で80%に達していることからも見てとれます。こうした共感度の高さこそ、変化の時代にあえて「攻め」の経営にシフトしようとするエネルギーを生み出す源泉であり、当社グループの最大の強みだと言えます。

持続的な成長のためには海外戦略のさらなる高度化が必要

日清食品ホールディングス株式会社常務執行役員・CSO 西川 恭

現在、日清食品グループは「EARTH FOOD CREATOR」として、環境・社会課題を解決しながら持続的成長を果たすという目標を掲げています。持続的な成長に向けて企業価値の最大化を図るうえで、私が特に重要と考えるのが、グローバル戦略の拡大と高度化です。

今後、海外事業において利益を拡大していくためには、米国に加えて、ブラジルや欧州をはじめとした、あらゆる地域でストレッチした成長戦略を描き、売上・利益の成長を実現していく必要があります。中長期的な市場成長や競合状況などを見極めながら、消費者の皆様のニーズを把握して「どこに」注力するかを検討するのはもちろん、「どのように」事業を伸ばしていくかという実行戦略の高度化に取り組みたいと思います。

とはいえ、海外事業には言語や食文化、味覚、嗜好、さらにはビジネス慣習など、国や地域ごとの具体的な差異を深く理解し、その国や地域に合った事業展開を模索しなくてはならないという難しさがあります。加えて、事業規模が拡大を続けるなかでサプライチェーンマネジメント(SCM)の重要性が増し、その巧拙が利益率に大きな影響を与えると考えています。当社グループは、2025年4月に調達と物流を統合した「サプライチェーンプラットフォーム」を設置し、Chief Supply Chain Officer(CSCO)を任命するなど、SCMの体制強化を進めています。今後、海外事業においても専門チームを編成し、グローバルなSCMにも取り組むことで、オペレーションの効率化と収益力の向上につなげていく考えです。

また、海外事業の拡大が加速するなか、グローバル化のステージに応じた組織や人材、ガバナンスの再構築に本格的に取り組んでいます。ガバナンス面では、事業拡大に伴うリスクの所在を明確にするとともに、安全や品質、コンプライアンスといった「絶対譲れない」テーマについては、地域や事業を問わず、基本に忠実に徹底管理することが重要です。同時に、海外現地の価値観や多様性を尊重するといったバランスの取れたガバナンスが求められます。そこで、当社グループは2024年4月にChief Governance Officer(CGO)を任命し、ガバナンス構築のための体制を再構築しました。現在は、日本からの管理を強化するとともに、海外現地でのブランド展開やマーケティング、開発・生産など各機能の運営最適化を進めています。

組織面では、タイに設置したRHQアジアを先行例に、事業の成長が著しい米州においてRegional Headquarters of Americasの設立に向けて準備しています。これによって現地におけるスピーディな意思決定やグループ全体で蓄積した知見・経験の活用、グローバルレベルでのリスク管理など、幅広い面で最適な組織づくりを目指します。

そして人材育成は、最も重要な経営課題の一つと捉えています。事業の成長スピードが加速するなかで、その成長を持続可能なものとするためには、人材の質と量の両面での強化が不可欠であり、タレントマネジメントの高度化に取り組んでまいります。まずはDE&Iを徹底し、多様な人材が、自分の居場所を見つけ、思う存分働ける環境をつくること、そのうえで、先述した創業者の“想い”をグローバルに共有し、「我々は日清の一員である」という意識を持つことが重要です。そうした基盤の上に、当社グループが大切にしている4つの思考、すなわち「CreativeでUniqueな仕事に取り組み、Globalな領域で世界の人々にHappyを提供し続ける」を浸透させていきたいと考えています。また、「日清10則」に掲げる「自ら創造し、他人に潰されるくらいなら、自ら破壊せよ。」や「不可能に挑戦し、ブレークスルーせよ。」を実践し、日々の仕事の中で「小さなイノベーション」を積み重ねていける人材を増やすことで、海外展開の成功はもちろん、当社グループの持続的な成長を実現していきます。

日清食品ホールディングス株式会社常務執行役員・CSO 西川 恭

中長期成長戦略に掲げる3つの戦略を着実に推進していく

2024年度の当社グループの業績は、売上収益、既存事業コア営業利益ともに過去最高を達成するなど、確かな成長を継続しています。ここ数年の成長は著しいものがあり、現在の不透明な外部環境のもとで、次の段階へとステップアップできるかどうか、「本当の実力」が試されるフェーズにきていると捉えています。現在も国内外で積極的な生産設備投資を実行していますが、今後はより一層、商品力や販売力への投資を強化し、新工場も含め生産拠点の稼働率を高めていくことが重要です。

2021年度に始動した「中長期成長戦略 2030」では、以下3つの戦略を掲げており、これまでのところ順調に進捗しています。

まず、「既存事業のキャッシュ創出力強化」については、海外事業を成長エンジンと位置づけており、海外での成長期待の実現に、全力をあげて取り組んでいきます。当社グループの根幹を成す国内即席めん事業については、安定成長を維持する中で、ブランド力やマーケティング力といったコンピテンシーを磨いていきます。非即席めん事業についても、国内で育ててきたブランドをグローバルに展開することで、利益貢献度を高めていきます。

二つ目が、環境戦略である「EARTH FOOD CHALLENGE 2030」です。2030年に向けて、気候変動対応と資源の有効活用に関する定量的な目標を定め、持続可能な社会の実現と企業価値の向上を目指しています。これについては次項で詳述します。

三つ目の「新規事業の推進」では、「完全メシ」の展開に注目しています。すでに海外展開も開始しており、健康志向が高まる米国市場において「KANZEN MEAL」ブランドの冷凍パスタのテスト販売が始まっています。私自身も米国の現場で試食する機会がありましたが、新しいコンセプトで有望なマーケットにチャレンジしている最前線の“ワクワク感”を強く感じました。

中長期成長戦略
中長期成長戦略

持続的な社会と企業価値向上を両立させるESG/サステナビリティの取り組みを強化

日清食品グループが持続可能な成長を続けていくためには、中長期的な視点にたって、自社事業を通じた経済的・社会的価値の創出を積み重ねることが重要だと考えています。したがって、ESGやサステナビリティに関する取り組みは、単なるリスクへの対応ではなく、今後50年、100年と事業を継続していくうえで不可欠な「ビジネスそのもの」の課題です。2024年度も、環境戦略「EARTH FOOD CHALLENGE 2030」の着実な実行に加え、ESGインパクトの定量化分析、各種開示規制への対応を強化しています。

環境戦略「EARTH FOOD CHALLENGE 2030」については、気候変動への対応としてCO2排出量の削減、資源の有効活用としてパーム油の持続可能な調達を両軸とし、2030年度目標に対して着実な進捗を示しています。

次にESGインパクトの定量化は、ESG施策と企業価値との関係性の可視化を目指して、2021年度から取り組んできたものです。ESG施策が、どのような経路を辿り企業価値の向上につながるのかを示す「価値関連図」の作成が典型的な取り組みですが、2024年度はE(環境)、S(社会)、G(ガバナンス)の分野ごとに施策を網羅的に取り込むことで、ESG活動と企業価値の結びつきをより包括的かつ説得力をもって示すことができました。

価値関連図-E(環境)領域-

ストーリーの一例として青い矢印は、EARTH FOOD CHALLENGE 2030でのCO2排出量削減の取り組みが、社外コミュニケーションを経て、評価向上、売上拡大を通じたEPS改善へ寄与するルートを示している。

価値関連図-E(環境)領域-

開示規制への対応については、欧州のCorporate Sustainability Reporting Directive (CSRD)や国内のサステナビリティ基準委員会(Sustainability Standards Board of Japan (SSBJ))基準など、新たなサステナビリティ開示規制にも対応できるよう準備を進めました。また、欧州のサステナビリティ関連規制によりタイムリーに対応できるよう、オランダに駐在員事務所を設立しました。

また、日清食品グループの事業活動が生物多様性に与える影響を把握するため、Taskforce on Nature-related Financial Disclosures (TNFD)が発表したフレームワークに基づき、LEAPアプローチ※2を用いた自然関連リスク・機会評価を実施し、その結果を開示しています。

  • TNFDが提唱する自然関連リスクと機会を科学的根拠に基づき体系的に評価するためのプロセス。TNFD情報開示に向けた準備として、分析スコープを選定した上で、自然との接点を発見する「Locate」、自然への依存とインパクトを診断する「Evaluate」、自然に関する重要なリスクと機会を評価する「Assess」、リスクと機会に対応しステークホルダーに報告する準備を行う「Prepare」の4ステップの順で進めることが特徴

「Growth Mindset」を日清食品グループの成長の原動力に

日清食品ホールディングス株式会社常務執行役員・CSO 西川 恭

私はこれまでの長きにわたるキャリアを通して、Growth Mindsetを信条としてきました。これは「人の能力は生まれつき決まっているものではなく、経験や努力によって伸ばしていける」という考え方です。その対極にあるのが、能力の上限は生まれつき決まっていると考えるFixed Mindsetです。誰しも心の中に、これら相反する気持ちを重ね持っているものですが、Growth Mindsetを強く意識することで、新しい知識を習得し、新しい仕事ができるようになることに喜びを感じ、自身を成長させることができます。

私は、この考えを日清食品グループの従業員にも伝え、浸透させていきたいと思っています。「失敗した時に、落ち込んだり、失敗を隠そうとするのではなく、経験を踏まえて次回に改善する機会を得られたと考えること」(失敗から学ぶ)や、「どうしたら改善できるかの助言を、周囲の人に積極的に求めること」(他者から学ぶ)が、Growth Mindsetを持つためのコツです。そうすれば、自らの成長を加速することができ、一人ひとりの成長が組織の成長につながります。

今回、日清食品という会社でCSOとして新たな仕事ができることは、私にとってまさに“ワクワクする”経験です。課題は多岐にわたり、そのなかには難題も少なくありませんが、当社グループには、世界に誇れる理念があり、強力なブランドや素晴らしい人材など、コアとなる強みがあります。これら強みを最大限に活かしながら、私自身も日々新しい仕事にチャレンジし、失敗や他者から学んで成長し続けることで、当社グループのさらなる成長に貢献していきたいと思っています。

日清食品ホールディングス株式会社常務執行役員・CSO 西川 恭

VALUE REPORT
2025

WHO日清食品グループとは?[4.73MB]

  • グループ理念
  • 社会価値創造History
  • 日清食品グループの今
  • 価値創造プロセス
  • 日清食品グループの6つの資本
  • 日清食品グループのコアとなる強み

WHAT何を目指すのか?[3.56MB]

HOWどのように目指すのか?[19.7MB]

  • CSOメッセージ
  • CFOメッセージ
  • CIOメッセージ
  • 中長期成長戦略 2030
  • 成長戦略❶ 既存事業のキャッシュ創出力強化
    • 国内即席めん事業
    • 国内非即席めん事業
    • 国内TOPICS
    • 海外事業
    • 米州地域―米国
    • 米州地域―ブラジル/中国地域
    • アジア地域/EMEA地域
  • 成長戦略➋ EARTH FOOD CHALLENGE 2030
    • 気候変動問題へのチャレンジ
    • 資源の有効活用へのチャレンジ
  • 成長戦略❸ 新規事業の推進
    • 最適化栄養テクノロジーの多面展開
    • 完全メシを日本から世界へ
    • 最適化栄養食の基礎研究
  • 人的資本の拡充
  • 健康経営・人権への取り組み
  • 社外取締役パネルディスカッション
  • コーポレート・ガバナンス
  • 取締役・監査役

データ  [1.11MB]

  • 財務サマリー
  • 非財務サマリー/主な外部評価
  • 即席めんの世界市場データ
  • 会社情報・株式情報