CEOメッセージ
不変の原点「食足世平」。
構造変化の時代に、変革をやり切る
日清食品ホールディングス株式会社
代表取締役社長・CEO
安藤 宏基
不変の原点、「食足世平」
食が足りてこそ世の中が平和になる―。創業者精神の一つである「食足世平」は、日清食品グループの不変の原点です。創業以来、私たちは、食を通じて人々の役に立つために何をすべきかを問い続けてきました。
私たちが提供するのは、単に空腹を満たすための食ではありません。人々の心を動かし、驚きや幸せを届けること。その思いを、事業活動の一つひとつに込めてきました。食を通じて世の中に貢献するという姿勢は、これからも変わりません。そしてその姿勢は、私の経営判断の軸として揺るぎなく存在しています。
いま向き合う二つの軸:Planetary HealthとHuman Well-being
食を取り巻く環境は大きく変化しています。気候変動や生物多様性、サプライチェーンの不安定化、栄養課題、消費者ニーズの多様化など、食品メーカーが向き合うべき課題は多岐に広がっています。そのなかで当社グループは、地球規模の二つのテーマに挑んでいます。「Planetary Health」と「Human Well-being」です。
この二つに取り組む理由は明確です。第一に、当社グループにはその解決に貢献できる力があるからです。私たちは世界の即席めん市場を牽引してきたリーディングカンパニーとして、新しい食の選択肢を生み出し、世界中の消費者に届けてきました。その背景には、イノベーション、マーケティング、ブランディングといった強みがあります。環境負荷の低減や栄養課題の解決に向けた取り組みを、こうした強みを活かして商品やサービスとして実装し、広く社会に届けることができる―これが一つ目です。
第二に、“やらなければならない”という使命があるからです。川上から川下まで当社グループの取り組みが環境や社会に及ぼすインパクトは決して小さくありません。だからこそ、環境負荷の低減や栄養課題への対応を、業界をリードする水準で進めていく責任があります。私たちが一歩踏み出せば、その効果は自社の枠にとどまらず、サプライヤーや流通、消費者の行動変容にも波及していきます。
「Planetary Health」は、地球環境との共生に向けた取り組みです。気候変動や生物多様性の損失は、食品メーカーにとって単なる社会課題ではなく、原材料調達や安定供給に関わる経営課題でもあります。当社グループでは、環境戦略「EARTH FOOD CHALLENGE 2030」という全社で取り組むイニシアチブを2020年にスタートさせ、CO2削減や持続可能な調達などの取り組みを中心に、毎年着実に推進させています。また、環境負荷の低減や持続可能な食料システムの構築に向け、プラントベース食品や代替たんぱく質の研究開発を進めるなど、豊かな食文化を次世代へつなぐための新たな選択肢を生み出していきます。これは単なる代替手段の提案ではなく、これからの社会に適した新しい食文化の創造でもあります。
「Human Well-being」は、人々の幸福感を高める取り組みです。先進国を中心に食生活が豊かになる一方で、飽食や偏食、過剰栄養と栄養不足の課題が同時に存在しています。当社グループは、健康と栄養の社会課題に正面から向き合い、「最適化栄養食」を事業として推進しています。即席めんで培った加工技術などを活用し、栄養とおいしさの両立を追求していく。これは、創業者精神の一つである「美健賢食(美しく健康な体は賢い食生活から)」を体現する取り組みです。
私たちは、こうした社会課題への取り組みを「良いことだからやる」にとどめるつもりはありません。社会価値を創ることが、企業やブランドへの信頼を培い、中長期の経済価値につながる。私は、この両立を本気でやり切りたいと考えています。
構造変化の時代に、レジリエントな強みを活かす
足元のグローバル経営環境は、歴史的にも大きな変動期にあります。地政学リスクの高まり、サプライチェーンの分断、インフレと金利の変化、消費の二極化、食品市場における競争激化など、企業経営の前提は大きく揺れています。昨日までの成功体験が、明日も通用する保証はどこにもありません。
私はこの環境を、一過性の逆風ではなく、構造変化として捉えています。ここで重要なのは、短期的な手当てを繰り返すことではなく、変化を見極め、持続的成長のための打ち手を積み重ねていくことです。その土台となるのが、当社グループのレジリエントな事業構造です。即席めんを中心とする事業ドメイン、世界各地で磨いてきたブランド、そして地域・事業のポートフォリオ。これらを最大限に活かしながら、対処すべき経営課題に対峙していきます。
課題を明確にした一年、グローバル成長戦略を再構築
2025年度は、米国事業における即席めん需要増加の反動、消費行動の変化、全社的なコスト上昇などの影響を受け、グループとして厳しい業績となりました。なかでも米国事業は、私自身が最も重く受け止めている課題です。低価格志向の高まりとプレミアム商品の競争激化が同時に進むなかで、私たちの対応は十分ではありませんでした。
一方で、課題が顕在化したことで、再成長に向けて取り組むべきことも明確になりました。軸となるのは、グローバル成長戦略の再構築と、それを支える経営基盤の強化です。2026年度は特に海外事業でのブランド戦略を抜本的に見直したうえでの、再成長の起点と位置付け、Mid-single Digitでの利益成長軌道への回帰を目指します。日本でもデフレからインフレへの構造変化が進み、さまざまなコスト上昇圧力が生じていますが、こうした環境下においても、的確な価格改定を通じてコスト増を吸収し、持続可能なオペレーションを維持していきます。
これまで積み重ねてきた各種施策を通じてブランド価値を一段と高めることで、消費者の皆様にとって選び続けていただける価値を創出してまいります。課題の先送りをせず、改革をやり切ります。
私は、米国市場を単なる大きな市場ではなく、グローバル成長を牽引しうる戦略市場として位置付けています。商品戦略では、日本のラーメン専門店の品質を家庭で手軽に楽しめる価値提案を打ち出し、「BOLD TASTES of TOKYO」をコンセプトに、Japanese Ramenカテゴリーへの本格参入を進めます。これまで即席めんは“スナック”として消費されてきましたが、その枠を超え、“本格的な食事(Meal)”として選ばれる存在へと進化させていきます。組織面では、Regional Headquarters of Americasを最大限に活用し、現地での意思決定スピードを高めます。「やってみて違えばすぐに正す」、そうした機動力を持った体制へ変えていきます。
グローバルでの成長を実現するには、供給体制の強化も不可欠です。国内では工場の設備刷新を進め、品質と生産性のさらなる向上、安定供給体制の強化を図ります。海外では、米国・ブラジル・メキシコなどでの新たな生産拠点の立ち上げを含め、将来の需要増を見据えた投資を進めます。
同時に、事業ポートフォリオも磨き直します。国内の即席めん事業はキャッシュ創出の中核として競争力を磨き続ける一方、非即席めん領域や新規事業は次の成長エンジンとして育てていきます。そこでは、私たちが培ってきた「革新的なプロダクト×大胆なコミュニケーション」という勝ちパターンを横展開していくことが鍵になります。必要に応じて、M&Aやアライアンスも選択肢として活用しながら、内外の成長機会を取り込んでいきます。既存事業とのシナジーを明確にしながら、グループ全体で再現性のある成長モデルをつくっていくことも重要です。
また、グループ全体のコスト構造改革にも取り組みます。グローバルベースでコスト構造を可視化し、全社横断で最適化を進めています。改善余地のある領域を洗い出し、筋肉質なオペレーション構造を再構築することで、利益水準を押し上げ、次の成長投資を可能にするキャッシュ創出力を高めていきます。
既存事業コア営業利益に見る持続的成長イメージ
ステークホルダーの皆様へ

世界初の即席めん、世界初のカップめんを生み出した先駆者として、私たちは常に“次”を発明してきました。今、求められているのは、価格だけで競うのではなく、消費者の皆様の期待を超える価値を提供し続けることです。おいしさ、簡便性、安心、そして環境、栄養―食が持つ多面的な価値を統合し、社会課題の解決に資する商品・サービスへと昇華させていきます。
私たちは創業以来、「創造」を原動力として成長してきました。今、必要なのは、原点に立ち返りながら、現実を直視し、変化を恐れず、挑戦を継続することです。食を通じて世の中に貢献し、持続可能な社会形成の一助となることで、長期的な企業価値の向上を実現していきます。今後とも変わらぬご支援を賜りますよう、お願い申し上げます。
VALUE REPORT 2026
02NISSINの成長戦略 [11.9MB]
- CSOメッセージ
- CFOメッセージ
- 特集 社外取締役スモールミーティングー投資家との対話ー
- 中長期成長戦略 2030
- 成長戦略❶ 既存事業のキャッシュ創出力強化
- 国内即席めん事業
- 国内非即席めん事業
- 海外事業
- 北中米地域―米国
- 南米地域―ブラジル
- 中国地域
- アジア地域/EMEA地域
- RHQトップメッセージ
- 成長戦略➋ EARTH FOOD CHALLENGE 2030
- 気候変動問題へのチャレンジ
- 資源の有効活用へのチャレンジ
- TCFD・TNFD提言に基づく情報開示
- 成長戦略❸ 新規事業の推進
- 「完全メシ」ブランドのポテンシャル
- 最新トピックス
- 最適化栄養食の基礎研究
03NISSINの経営基盤 [2.54MB]
- 人財戦略の強化
- 健康経営・人権への取り組み
- コーポレート・ガバナンス
- 取締役・監査役
データ [1.32MB]
- 財務サマリー
- 非財務サマリー/主な外部評価
- 即席めんの世界市場データ
- 会社情報・株式情報