CEOメッセージ
CEOメッセージ


「EARTH FOOD CREATOR」として、
新しい食の文化を
創造し続け、
環境・社会課題を解決し、持続的成長を目指す
日清食品ホールディングス株式会社
代表取締役社長・CEO
安藤 宏基
日清食品グループならではの
CSV経営のために
創業者精神の「食足世平(食が足りてこそ世の中が平和になる)」「食創為世(世の中のために食を創造する)」にあるように、日清食品グループの原点は、戦後の食糧難という社会課題への挑戦であり、これは今でいうCSV経営そのものであります。足元では、日本を含む先進国においては飽食や隠れ栄養失調など、様々な食に関する社会課題が認識される一方、昨今の世界情勢から食糧難問題が深刻化している国も存在します。こうした中、私たちは、新しい食の文化を創造し続け、環境・社会課題を解決しながら持続的成長を果たす「EARTH
FOOD CREATOR」として、日清食品グループならではのCSV経営を実践してまいります。
現在、世界的に「環境」と「栄養」が注目を集めています。2021年11月の第26回気候変動枠組条約締約国会議(COP26)では、産業革命前からの気温上昇を1.5度に抑える目標が明文化されました。また、12月に開催された東京栄養サミット2021では、健康と栄養に関わる諸問題について議論が交わされています。この2つのテーマは、食品メーカーがより積極的に取り組むべきテーマであり、社会からの期待も高いエリアであると認識しています。
当社グループが価値を創出すべき領域が広がる中、不変の理念である創業者精神を再認識するとともに、既存事業の深化と新規事業の探索という「両利きの経営」を追求し、さらなる進化を目指していきます。創業者は常に「成長一路、頂点なし」と語っていました。我々も常に次のステージを意識していかなければなりません。


2030年のビジョン実現に向けて、
自らの使命を果たし、
持続的成長を目指す
これからの10年を見越して2021年5月に発表した「日清食品グループ
中長期成長戦略」では、独自のCSV経営におけるビジョンの実現に向けて、3つの成長戦略テーマを掲げました。1つ目は「既存事業のキャッシュ創出力強化」。2つ目が「EARTH FOOD
CHALLENGE 2030」。そして3つ目が「新規事業の推進」です。これらのテーマに一体的に取り組むことが「EARTH FOOD
CREATOR」の体現につながっていくものと考えています。安定的なビジネスの基盤を構築し、人々に安全でおいしい食を提供し続けることはもちろん、環境・社会課題を解決する製品の開発を進めていくことが、日清食品グループの使命です。事業活動を通じてSDGsの達成に貢献していくことが、当社の持続的成長を目指すうえでますます重要になっていると感じています。
「既存事業のキャッシュ創出力強化」では、当社の商品を世界中のより多くの消費者に届けるために、主に海外事業が今後の成長をけん引していくことを計画しています。
1桁台後半から2桁の成長を目指し、利益構成比を現在の約30%から約45%まで拡大させていきたいと考えています。特に「カップヌードル」は、世界100カ国以上で販売され、2021年5月には世界累計販売食数が500億食を突破するなど、発売から半世紀以上経った今もなお、成長と進化を続ける基幹ブランドとして期待しています。販売額では、グローバルブランドのKPIといえるBillionaire
Brand(10億ドルブランド)を超え、Double-Billion-Dollar
Brand(20億ドルブランド)を狙えるステージに到達しました。今後は「カップヌードル」のグローバルブランディングの深化を加速させ、成長ドライバーとして競争優位性を強固なものにしていきます。そのためには、グローバル人材の育成が喫緊の課題です。コロナ禍で海外への渡航が制限されている状況が続いていましたが、感染リスクと安全に十分配慮しながら、グローバルマーケットでの挑戦を志す従業員の力を引き出していきたいと考えています。
また、国内においても、即席めんのリーディングカンパニーとして培った技術やマーケティング力を横展開し、総需要の安定的な増加を図り、成長軌道を確かなものにしていきます。非即席めん事業を1桁台後半で成長させ、利益構成比を現在の約10%から約15%へと拡大させることにより、事業の多角化において非常に重要な低温・飲料事業、菓子事業を、即席めん事業に次ぐ第二の収益の柱に育てていきます。
「EARTH FOOD CHALLENGE 2030」
持続可能な社会の実現と企業価値の向上の両立を目指し、環境戦略「EARTH FOOD CHALLENGE
2030」を策定しました。この環境戦略では、2つの柱として「資源有効活用へのチャレンジ」と「気候変動問題へのチャレンジ」を掲げています。
環境課題の中でも気候変動問題は、原材料価格の高騰や自然災害による生産・物流拠点への被害、消費者の購買活動の変化などさまざまな影響をもたらすことから、重要な経営リスクであると考えています。当社ではTCFD提言に基づき将来的なビジネスへの財務影響について、炭素税の導入や自然災害の増加などが発生する3つのシナリオを用いて分析した上で、適応策を進めています。現在、省エネや再生可能エネルギー由来電力の導入、水資源の効率的な利用などを実施しているほか、植物代替肉などの環境負荷低減に資する製品開発にも注力しています。さらに、気候変動の緩和に向けた取り組みを加速させるため、2020年6月にCO₂削減目標のSBT認定の取得※、2021年2月に事業活動で使用する電力の再生可能エネルギー100%調達を目指す国際イニシアチブRE100へ参画しています。RE100参画時点で、グループ全体の再生可能エネルギー比率は数パーセントでしたが、2021年度には約18%へと向上しています。引き続き、省エネルギー施策、再生可能エネルギーや高効率なエネルギー設備の導入などを進めるほか、2050年までにCO₂排出量をカーボン・ニュートラル(ネット・ゼロ)
にすることを目指しています。
資源有効活用のチャレンジでは、2030年までに「持続可能なパーム油の調達100%」(国内即席めんについては2025年)を目指し、森林破壊の防止や労働者の人権に配慮の上、生産されたことが確認できるパーム油の調達拡大を進めています。また、「日清食品グループ持続可能なパーム油調達コミットメント(NDPE方針を含む)」の遵守に向け、今年5月に2030年までの取り組み指針を公開しました。本指針をもとに、サプライチェーンの上流に位置する搾油工場
(ミル) やアブラヤシ農園に対する包括的な支援に取り組んでいます。具体的には、衛星モニタリングツールによるアブラヤシ農園や搾油工場(ミル)周辺の森林破壊リスク確認や、サプライヤーの名称や所在地
(位置情報)を集約したパーム油のミルリストの作成・管理、アブラヤシ農家へのアンケート調査・直接対話を通した現地調査などの施策を進めています。
※パリ協定と整合し世界の平均気温の上昇を産業革命前に比べ2℃を十分に下回る水準に抑える科学的な根拠に基づいたものとして、Science Based Targets(SBT)が認定している。
フードサイエンスとの共創による「完全栄養食」プロジェクトが本格始動
さらなる企業価値の飛躍を目指した「新規事業の推進」では、フードサイエンスとの共創によって「未来の食」を提案していきます。まさに創業者精神の一つ「美健賢食(美しく健康な身体は賢い食生活から)」の体現をCOO安藤徳隆の主導で進めます。長年培ってきた加工技術に裏打ちされた「フードテックカンパニー」へのさらなる飛躍は、日清食品グループだからこそできる取り組みであり、食を通じて全ての人の健康を守る夢のある仕事といえます。
ブランド力を生かし、困難な局面を乗り切るために
2020年度下期から世界的に資材価格が高騰し、特に、パーム油、小麦粉、原油を使用する各種資材の値上がりが顕著です。こうした状況を受け、海外に続き日本国内でも価格改定を実施させていただきました。今回の価格改定は、自助努力だけではコストの増加を吸収しきれないと判断したための措置になりますが、引き続き、経営の効率化を図り、よりおいしく、より価値のある製品をお届けできるよう努めてまいります。


創業者の想いと能力を受け継ぎながら、
世の中にないものを生み出す
従業員に対しては、明確なビジョンを示し、目標を掲げ、その力を結集し、成長に導いていくことが重要です。「EARTH FOOD
CREATOR」の体現を目指す日清食品グループの従業員には、全てをゼロから創造・提案する「クリエイトする力」が求められます。クリエイションは、原理原則からはみ出るイレギュラーなものから生まれてきます。そうした非連続性を見極め、世の中にないものを生み出すことができるよう、活躍の場、挑戦できる場を提供してまいります。
単に効率を高めるだけでは昨今のビジネス環境の変化には適時適切に対応することができません。ドラスティックな環境変化に対する適応力が企業に求められるのと同じように、個人にもレジリエンスが必要とされる時代です。個人のレジリエンスとは、困難な課題や複雑な案件に対して前向きに取り組む姿勢にほかなりません。目標を達成するための「しつこさ」と言い換えてもいいでしょう。諦めず、妥協せず、成功するまで徹底的にやり続ける。そんな情熱のある人材が日清食品グループの成長をリードしてくれると確信しています。
思い返せば、私自身も「環境の変化に適応できなければ生き残れない」「カップヌードルだって進化しなければ淘汰されてしまう」との思いから、「カップヌードルをぶっ潰せ」と社内に檄を飛ばし、父である創業者と、ときに衝突しながら新しいブランドや商品を拡充してきました。その一方で創業者の秀でた能力をいかにシステム化するかを考え、ブランドごとに「ブランドマネージャー」を置く体制にして、「カップヌードル」を超えるようなブランドづくりのための体制を構築してきました。
創業者・安藤百福が、人々の空腹を満たしたいとの想いから世界初の即席めん「チキンラーメン」を発明したように、人の原動力は「想い」です。日清食品グループでは3月5日を「創業者記念日」と設定し、全従業員が創業の原点に立ち返る機会を設け、創業者精神の重要性を伝えています。グループのさらなる飛躍のため、今後も、国内はもとより海外の現地従業員にも創業者精神の一層の浸透を図っていきたいと考えています。
戦略