日清食品グループ

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CSOメッセージ

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世界の最新情報を吸収・咀嚼しながら 絶えず課題と解決方法を発見することで 経営目標の達成に貢献していく

日清食品ホールディングス株式会社
取締役・CSO 兼 常務執行役員

横山 之雄

成長戦略の2年目で掴んだ、好業績に勝る大きな成果

中長期成長戦略で掲げた“利益ポートフォリオの変化”は、計画2年目にして想定を上回る速度で進行しています。特に、KPIである「既存事業コア営業利益」において、2020年度からの2年間のCAGR(Compound Annual Growth Rate/年平均成長率)は約20%となり、中⻑期ターゲットであるMid-single Digitを⼤幅に上回る⽔準で推移しています。要因としては、米州を中心とした海外事業の伸長があります。コロナ禍の内食需要増加を背景に一人当たりの喫食数が上がり、間口が広がったところで、世界的なインフレによる景気後退局面を迎え、即席めんがその受け皿となりました。ある意味で、日清食品グループの商品が世界の流れとうまく適合した結果といえます。
昨年8月に米国で実施した平均36%の価格改定は前例がないものでしたが、新価格はスムーズに浸透したと認識しています。これは、当社が地道に強化してきたブランド力が下支えになったものであり、注力してきたプレミアム戦略の成果が着実に広がってきたことを実感しています。加えて、消費者に対してだけではなく、需給バランスが崩れたコロナ禍においても出荷を止めず、安定した商品供給に最大限努めることで、誠実に小売業者との信頼関係を構築してきたことがこの結果につながったと思っています。
また、国内の非即席めん事業も伸長し、「既存事業のキャッシュ創出力強化」を想定以上の結果で確認することができました。今後の中長期の投資戦略を余裕をもって進められ、打ち手の選択肢も増やすことができる点で非常に良かったと考えています。

今後、好調な海外事業をさらにドライブさせていきたいと考えています。特に、成長ドライバーとなる米州地域では、米国だけでなく、圧倒的な市場シェアを持つブラジルや業績を急拡大させつつあるメキシコにも非常に注目しています。経済情勢の変化を見極め、持続的な収益力の強化に取り組むとともに、中長期視点での安定的なサプライチェーンの構築や生産能力の増強に積極的に取り組み、2023年度も力強く増収増益を目指していきたいと考えています。また、海外事業を加速度的に推進するためには、グローバル人材の拡充・強化が重要な経営課題の一つと認識しています。従業員一人ひとりがグローバルな思考でどこでも戦える汎用力を身につけ、さらなる活躍の場やキャリアデザインをイメージし、実現しやすい環境の整備にも着手しています。

非財務資本の定量・定性分析を通じ、CSV経営の高度化へ

当社グループが環境価値、社会価値、経済価値、それぞれの最大化を目指す上では、全ての活動を包括して構造改革の企画・実行を主導していく必要があり、そのためにグループ全体の動きを分析し、評価していくことが重要だと考えています。
そこで、私は経営全体をサイエンス面から支え、指揮する「コーポレート・サイエンティフィック・オーケストレーター」というビジョンを持って業務に取り組んでいます。とりわけ注力しているのは、「ESG(非財務価値)と企業価値の関係性」に関する定量・定性分析です。これは多くの企業が直面する“ESGの取り組みは、本当に企業価値向上につながるのだろうか?”という命題への挑戦でもあります。2021年から取り組みを始め、すでに非財務価値とPBRの関係性、さらにESGアクションがどのような経路をたどって企業価値(株価)の向上につながるのかについて、ストーリーの形で明らかにすることができています。

この分析において重要なのは、継続して取り組み、年限を重ねていくことで分析結果の確実性を高めていくことです。また、分析結果の変化を読み取ることも重要です。例えば、“女性管理職比率が1%増えると何年後にPBRが何%上がる”という結果について、昨年は“1年後”だったものが、今年は“1年半後”となり多少のブレが出ることがあります。年限を重ねていくことで、こうしたブレが少なくなるとともにデータとしての信ぴょう性が高まり、分析精度を上げていくことができるのです。
加えて、女性管理職比率という項目については女性管理職が増えてくれば増えてくるほど、1%に対する限界効用が逓減する一方で、脱炭素など将来的にますます重要になってくる項目への取り組みについては、進めれば進めるほど将来における効果が上がってくるはずです。こうした仮説を検証するためにも年限を重ね、結果の変化を見極めていきたいと考えています。
これによって分析データの精度を上げていくことができれば、短期や中長期で異なる施策の優先順位付けをすることができ、有効な判断が可能になります。今後は、CSV経営を実践し、さらに高度化していく上で、分析・蓄積したデータを羅針盤のように活用していくことを目指しています。

レジリエントな人づくり・組織づくりに、根拠をもって取り組む

今後、ビジョンの実現に向けてグローバルでの成長をさらに推進していくためには、人的資本の強化が最重要テーマだと認識しています。特に、グローバル人材の採用・育成は喫緊の課題といえます。
そのために、現在、ジョブ型の人事制度の導入を検討しており、グローバル人材は何をする人なのか、国ごとにどのような違いがあるのかなど、職務内容や役割を定義し、それらに応じて評価していくことで、優秀な人材の採用と従業員のエンゲージメント向上を図っていく方針です。また、会社と同様に個人にもレジリエンスが求められる時代において、ジョブ型の人事制度は、従業員がキャリアデベロップメントパスを描き、社内でジョブホッピングしながら、積極果敢なチャレンジに邁進できる環境につながると考えています。そこで、まずは2023年度に管理職向けのジョブディスクリプションを整備し、テスト運用していきたいと考えています。
また、社内人材の育成という観点では、従業員のチャレンジを後押しする目的で設立された「社内大学 NISSIN ACADEMY」が4年目を迎えました。ここでは、さまざまなスキル・知識を学ぶだけでなく、部門横断的に役職の異なるメンバーが集まることで従業員同士が刺激し合い、いろいろな気付きを得られる場として機能し始めています。また、直属の上司部下間だけでなく、部署横断で従業員をつないで実施する「クロス1on1」による、多様な視点で相談に応じる機会の提供や、希望するキャリアを自ら選択し、チャレンジすることのできる「公募制度」の活性化などを進め、従業員のチャレンジとキャリア実現を支援する制度の充実を図っていく考えです。
さらに、人材施策や人事制度の改定などの人的資本領域については、従来から進めてきた非財務資本の分析手法をベースに、さらに一歩進めたVTA分析(Value Tree Analytics)に着手しています。この分析は、各施策単位で「その取り組みは、企業価値にどの程度つながるのか」を定量的に見ていくことができるため、通常では直接的な効果が測りづらく、長期で経過をみることしかできない人材関連施策についての優先度判断や成果創出への精度向上を図っていきます。

変化の時代に、サイエンス面から戦略の実行を支え続ける

VUCAの時代とよく言われますが、これからの環境変化は今まで以上にめまぐるしく、世界情勢や市場のトレンド・ルールも変わり、テクノロジーの進化もますます加速していくでしょう。ここで重要なことは、変化とその潮流をしっかりと掴み、自らをもフレキシブルに変化させ、対応していくことに尽きると思います。
今後、私はCSOとして世界の最新情報を常に吸収・咀嚼し、変わりゆく経営環境の中でも絶えず課題を発見し、それを経営に提言しながら、経営目標の達成に向けて「ヒト・モノ・カネをどこに投資していくのか」「施策を実行する組織や制度、プロセスをどのように設計していくのか」を打ち出していきます。そして、それによって戦略の実現性を高め、財務・非財務両面での企業価値の持続的な向上に貢献していきます。

ESG課題の定量化分析

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